第一章 第六話 説明
第一章
第六話
「ーーから言ったじゃない、精神誤認のお札でも使っておけばって、そりゃ私たちみたいな妖怪に会ったことも無い人間が初めに私たちのことを見たらーーー」
「そうは言うけど、君だってーーー」
「幸狐お姉様に、明様やめてください!おふた方の力でケンカなんかされたらーーー」
「うーん…あれ、僕夢を見て…」
と辺りを見回すと
「「「!!!」」」
驚いた様子で夢で見た人達がこちらを見つめている。
そのうちの金髪の一人が口を開き
「起きたようね。おはよう。どう、落ち着いた?あなた起きるなりすぐにまた倒れちゃうんだもの。私の名前は幸狐。とりあえず私たちの容姿とかここの場所とかはまとめて後で話すから、あなたの名前とどうやってここに来たか、それとあなたの世界のことを教えて。」
と尋ねると
「え、お、おはようございます。世界?えーと、僕はサルカ街出身の識別番号Eー109番で、名前が…あれ、名前…僕の?」
そういい、困惑したような表情のまま押し黙っていると、
「あなた、まさか自分の名前が分からないなんて言わないでしょうね、その識別番号?とやらは覚えているのに」
「…すみません…僕、名前が、分かりません。」
「明ー!!ちょっと明!!これってさっき言っていた多少の後遺症って奴?」
明と呼ばれた青髪の人は
「うわー、ほんとに可愛いなこの子。まじでどうにか…ブツブツ。 え!!あ、ああ、そうだなもしかしたら記憶面で少し障害が残ってしまったかもしれない。君、すまなかった。私の腕が足りないせいで君をちゃんと治療してあげる事が出来なかった…。医者として本当に面目無い。」
そういい深々とお辞儀をする。
「いやいや、やめてください。治療していただけて本当に感謝しています。それに今までずっと痛かった火傷も、あれ、火傷が…ない?」
「ああ、君が血塗れになって倒れていたからね。治療したんだ。あのままだったら君、死んでいたんだぞ。」
「僕は、そのままだったら死ねていた……。いや、助けてくださりありがとうございました。でも僕の知っている医者でさへもうあの火傷は治せないって言っていたのですが一体どうやったんですか?」
「火傷くらいだったら私の魔法で一発だよ。」
あたかも当然のようにそう告げる明に少年は
「ま、魔法?なんですかそれ?」
「魔法って言うのはーー」
「ストップ、ストーップ!!とりあえず魔法やら何やらはどうでもいいのよ。それよりあなたの記憶が無い事の方が重大でしょ?どこまで覚えているかも分からないし、何より明も言っていたけれど、あなたが何故あんなにボロボロになって私の神社に倒れていたのか、そこを教えてくれる」
そう、話の主旨を元に戻そうと口を挟む幸狐。
「えーと、多分名前以外は覚えていると思います。僕はサルカ街の食料調達班に属しているのですが、Fー12Factoryへ食料の調達で班の仲間と向かっている最中、Cー32に襲われました。私は何とか運良く脱出出来たのですが、その後Cー32に追われ身を隠すために廃屋内へと隠れました。多分そこで気を失ってしまったため、その後の記憶はありません。」
淡々と自身が死にそうになったことをさも当たり前のように話す少年。
それを聞き驚いた様子で幸狐は聞き返す。
「ちょっ、ちょっとまってその、しー三十二って言うのは何?それになんで食料調達なんかしなくちゃならないの、私たちがまだそっちの世界にいた頃にはもう農耕も完成していたはずでしょ。」
「まず、Cー32というのは自立感知式外敵排除兵器です。それに農耕が行うことのできるような土地は第3次世界大戦以降無くなってしまいました。それなので、食料は独自生産食品を加工するFactoryで作られており、その食料を奪取するのが僕の班の任務でした。それもそうですが、やっぱりここはどこなんですか?それになんでこんなに明るく、あなた方の容姿は変わっているのでしょうか?」
と聞くと。
「えーと、人間のあなたにはちゃんと理解できるか分からないけれど、私たちは妖怪なの。妖怪とひとくちに言っても色々な奴がここにはいるのだけれどまあ、それは置いておいて。ここはあなたがいた世界と異なるもうひとつの世界。つまり人間が居ない地球と言った所かしら。ここにはあなた達人間の言う科学といった物が発展していない。逆に魔法なんかがあるような場所。だから私たちからしてもあなたは特異中の特異なの。」
と幸狐が説明すると、少年は矢継ぎ早に尋ねる。
「じゃあ、一体どうして僕がこんな場所に来てしまったんでしょうか?」
「さあ、それは私もわからないわ。逆に私もあなたにそれを聞きたかったのだけれど、その様子じゃ知らないようね。」
「はい、分かりません。それよりどうやって帰ったらいいんですか?」
「!?あなたあんなにボロボロになって倒れていたのに元の世界に帰りたいの?もしかして家族がいるとか…?」
そのように幸狐が尋ねると少年は顔を俯かせながら
「…いえ、家族はいません。でも、ここにあまり長居しては皆様にもお邪魔でしょうし、それに一様まだ生存している仲間がいるかもしれないので、帰れるのでしたら…」
ぽろぽろ…ぽろぽろ…
「あなた泣いてるわよ!!大丈夫?」
「え!!、あ、いえ、すみません。すみません。」
と自分でも驚いたような様子で答えた。
「もういいわ、もう少し時間をあけてからにしましょう。あなた、心が疲れてしまっているのよ。私達もあなたを元の世界に帰す方法を知らないの。幸か不幸か時間だけは沢山あるわけだしとりあえず、あなたはもう少し休んで心の整理がついたらまた話してちょうだい。」
「…はい…」
少年は俯きながらひとつ小さく返事をすると再び眠りについていった。
小説書くの難しい