第一章 第三話 転機
やっと物語が進みます
第一章
第三話
世界が区切られて以来、私たち妖怪は変化のない恒久な時の中を生きていた。朝日が登り、太陽が沈み、月が登り初めやがてまた朝が来る。自身たちの存在は確立しているため死ぬこと、つまり存在の否定がないため消えることもなければ、姿かたちの変化もない。だからといって食事を取らなければ腹も減るし、睡魔も必然的に襲ってくる。だから食べるし、寝る。そんな日常を過ごし始めてからどれほどたっただろう。何回季節が回ったのだろう。こんな生活をしていると、他の妖怪たちは変化が欲しい、刺激が欲しいとぼやく奴らも出てくる。でも私はいらない、なぜ?って、だって今の生活に満足しているんだもの、だからこれ以上はもう望まない。そんなことより、せっかくこんなにいいお昼寝日和なんだからもう少し、寝させてよ…Zzz..。
『お姉様ー!!、幸狐お姉様ー!!』
何よ、うるさいわね…。もう少し寝させて…って言ってるでしょ。
『お姉様、大変なんです。早くお社に、早く来てください!!お願いします。』
「そんなに慌ててどうしたの?」
『いいから、いいから早く来てください!!』
「分かった、分かったから…ふぁぁ…もうどうしたって言うのよ。私の大切な昼寝を邪魔するんだから相応のことなんでしょうね。歩きながらで構わないからわけを言いなさいな」
そのように幸狐が言うとまくし立てるように巫女見習いは
『そ、それがですね。私もこの状況をちゃんとは理解 していないのですが、私が日課のお社のお掃除をしていた時に、初め変なにおいがするなぁって思ったんですけど、気のせいだと思ってそのまま掃除をしようと思ったんですね。
だから私はいつものように雑巾で床を拭き始めると雑巾が赤色に染まってですね。
もうビックリしちゃって。
でもこれがなにか調べないとと思った私はまぁ薄々感づいてはいましたが、よく見ると血痕がポタポタと床に付いてまして、恐る恐る辿ってみると赤黒い肉の塊のようなものが倒れていたんです。気味が悪いかったんですけど近寄ってみるとそれはヒトの形をしていたんです。』
「え、何よそれ。何かの物語かなにか?そんなの現実にあるわけないじゃないの。そもそもなんでお社に血痕なんか付いていてその先にヒトの形のした肉の塊なんか落ちてるわけ?あなたなにか夢でも見たんじゃないの?もしくは狐にでも化かされたんじゃないの?まぁ私たちが狐の妖怪だからそんなことも無いか」
と幸狐は面白がって笑いますが、神妙な面持ちのまま狐の巫女見習いは
『いいえ。絶対の絶対にほんとです。嘘やまやかしなんかじゃありませんよ。だって私、驚きすぎて少しチビっ……』
「あなた、まさかチビっちゃったの?ぷぷぷ、まさか巫女見習いが怖くてチビっちゃったんだ〜」
『ちが、違いますよ!!いいからそんなことより事情も説明したことですし、早く来てください』
「分かったわよ、でもあなた事が済んだら早く下着着替えなさいよ」
『うううぅぅ、もういいですよ、分かりましたよぉ…うう』
「ほんとにあったわね…。」
『だから言ったじゃないですか!それにしてもどうするんです?これ?』
「と、とりあえずこれがなんなのかなんだけど…これもしかしたら人なんじゃない…?」
『人…ですか?』
「そう、ヒトじゃなくて人。あなたがまだ小さかった頃だから覚えていないかもしれないけど、この世界二つに分断されたじゃない。その時の私たちとは違う世界にいる生き物たちのことなんだけど…。なんでこんな所にいるのかしら?」
『でもお姉様、今はこの人?がどこから来たかよりも生きているかが、重要なんじゃないですか?』
「それもそうね。まぁ人は私たちよりもとてもひ弱だからこれほどの怪我じゃ生きていないと思うけど…まぁ一様ね」
ぽわぁぁっと淡い光が人の体を包んでいきます。
『お姉様、それでどうなのですか?』
「うんとね、この子…生きてるわね。信じられないけど。」
『そうなのですか!!では早く助けないと』
「そうなんだけど、私だけの力だとこの子の意識を取り戻させることも無理そうね」
『そうですか…でも助かる道はあるんですか?』
「あるっちゃあるわね。はぁ、出来ればあいつには頼りたくなかったんだけど、この際仕方ないから明のやつにでも頼みますか…はぁ…私あいつちょっと苦手なのよね。はぁー」
狐っ娘って神だと思います( ̄▽ ̄)ニヤリッ