表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
97/274

白い小悪魔について

花山・エリー・薫を慕う一人の女がいる。


彼女の名は吉沢 千夏。

白い小悪魔というのは彼女が所属している男子拳法部員達が

密かに名付けた呼称である。

由来は、そのスタイルの良さで目を釘付けにさせておきながら、

一切男を近付かせない気丈さを持つために生まれる

もどかしさから男子共が命名。

他に悪魔的に強いから、部員内の関係性を悪化させたからなど諸説ある。


そんなろくでもない名前を付けられたり、

実際薫に襲い掛かるような異様な行為が見られるが

実のところ意地悪な部分全て、仮の人格である。


本当は花山と仲良くしたい、と誰よりも想っていた人物である。


彼女は一般家庭に生まれたが、

少し変わった事情を持った家族の一員・長女として生まれた。


その事情とは、大家族。

それも彼女と母を除き全員男なのである


両親も不思議なほど、最初に生まれた千夏から

九連続男の子が生まれ、つい最近も10人目の家族が生まれたが

男だった。

これによって女の子が出来る気配がないと

ふんで吉沢家の家族が増えることはなくなった。


千夏自身、妹を切望していたが結局できなかった。


そんな彼女が生まれてすぐ待っていた生活は、姉としての自覚を持つこと。

良き年長者であること。


そのため弟たちに対して優しく厳しく世話をする、

第二の母親とならざるを得なかった。


同性ではない兄弟たちとの関係に溝はなかった。

お互いは信頼関係にあった。

しかし、千夏の気疲れは大きかった。


女子としての悩みも楽しさも共有することはできなかった。

無論、弟たちを可愛がってはいたがそれでも寂しかった


そんな事情で妹の存在を懇願していたが、

その夢も最近絶たれ、家族に悟られまいと元気に両親を勇気づけていたが

内心はかなり落ち込んでいた。


その空元気の姿は、最初に治雄と薫との会話の状態と酷似している。

あれも無理に快活さを演じているだけだった。


彼女は昔から下の男兄弟になめられることや母譲りのプロポーションになって

変な虫が寄り付かないようにするために、父は格闘技を習わせようとした。

その結果が拳法であり、父の希望もあって硬派なクラブで鍛えられた結果、

元の優しい性格が道着を来た時だけは薄れ、

かなり挑戦的な人格が出てしまうようになった。

車に乗ると性格が荒くなったりする現象そのものだった。

父の期待通りの結果である。

しかしそれも千夏自身が望んだものではなかった


結論から言えば、彼女の真の性格とは

優しさもあるが一番は寂しがりで強がりな部分が強い。

ただそれも長女という性質、彼女の生い立ちからして

甘え下手となって誰にも頼れない状態となっている。


そうして頼れる者がおらず、妹という夢も消え

日に日にストレスを溜め、

近々自慢の身体能力を振るえなかった。

体力テストで手を抜いたという話は嘘である


それでも中には真実を一部話していることがある。

それが薫のことについて。


彼女のことについては千夏はよく知らなかった。

見た目が可愛い女の子程度にしか思ってなかった。

そこに負の感情は一切なく、チヤホヤされているのが気に入らなかったというのは

もちろん嘘である。


体力テストや日々の生活をクラスメイトとして接触はなくとも

どんな人間か知るようになり、いずれ

千夏は彼女のことを段々と愛おしく感じ始めた。


そう、妹に似たような親愛をも抱き始めてしまったのである。


小さい体ながら力いっぱい運動に打ち込む姿、

きっと意中の人であるだろう治雄に一生懸命アピールしている様などを見て、

その想いは加速していく。


エスカレートしていく愛の勢いは遂に行動を起こさせた。

それでも本当は引っ込み思案である彼女が強引に話しかけたり、

話を展開することはできない。

そこで彼女は皮肉にも治雄を待ち続けた薫の様に、

自身が介入しやすい話題ができるまで粘り強く、待つことにしたのだ。


そうして学期末も近付き、

何の進展もないまま夏休みに突入してもおかしくない

という流れの中、神はやっとチャンスを彼女に与えた。


それが、部活探しの話である。


そうして空元気で親愛なる薫にコンタクトを取ることができたが、

問題はその後だった。


いつ来てくれるのだろう?

そもそもどう接すればいいのだろう?


本当は不器用で要領を得ない千夏は色々困った。

日時についてはそのまま声がやたらデカい彼女らの会話を

盗み聞きするなりで、どうとでもなる。

問題は部での対応である


この時からただの見学であるのに、もてなさなければいけないだとか

仲良くなれるようにしなければならないだとか、発想が

一段階テンポアップしてしまっているのだが

無論誰もそれを教えてはくれない。


結局、彼女が至ってしまった答えが

一緒に身体を動かし向かい合えば、仲良くなれる!

という浅はかなものだった


更にこの作戦には彼女が道着を来た時に出る

挑戦的な性格が仇となる。


千夏自身はそこまででもないが、

拳法の時だけは闘争心や実力主義といった考えは強く、

元々部長もそれに同じだった。


また彼女が部長より強かったのだが、

それを特に部長は悔しがる所か自分より強い女子が来てくれたことを

嬉しがったり、部内の男子からも人気があったことから

千夏を持ち上げる動きが強かった。


そのため事実上のトップにまで祀り上げられ、

部内での男女の確執は深まるばかり。


持ち上げる男子、

それが気に入らない女子で部の絆には亀裂が。

白い小悪魔の命名は女子からも納得だった訳である


元の人格に反して自信家の道着姿の千夏は気を良くして、

先輩を無下に扱ったりしていた。

そんな最中、薫との対決の偶然の勝利、

痛み分けにも近い引き分けの結果でも

先輩女子たちの心に一陣の心地よい風を吹かしたわけである。

男子もまた今回の部内のアイドルの苛烈さを見たことで肝が冷え、

狂信的な支持はなくなるだろうと考えられる


そうしてどんなに好戦的な千夏の裏の人格が出たとしても

この話が引き合いに出されれば、いずれ敗北を知らなかった勝気な性格は

静まることだろうと予測される。

それは荒れに荒れた部内全体の関係性の回復の兆しとなるだろう


こうして様々な悪しき偶然や事情が重なり、

威圧的な招待から熾烈なキャットファイトが生まれてしまっただけであって

本来の千夏の人格は大家族の長女らしく健気で優しいものなのである。


しかし、その真実を治雄と薫は知らない。


治雄は快活な女の子と信じて疑わないし、

薫は激しい戦いで詳細の記憶が欠落しているので

何か分からないが千夏のことは避けるような行動を取るだろう


それをどうやって挽回していくか。

果たして彼女に妹分と頼れる存在はできるのか。



それはこれからの吉沢 千夏の頑張り次第である

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ