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部活探し編・15

味方はいない、一人で立ち向かわなくてはならない。

側には誰もいない。


逆境とも言うべき境遇を、

温室育ちの彼女は知らなかった。

知らぬようにしてきたし、努力せずともホームは出来ていた。


その避けてきたアウェイを、完全に作られた。

そして現況を作り出した元凶が目の前にいる


「ああ......やっぱり、丁度いいサイズが無かったかぁ」


ぽりぽりと頭を掻く仕草も、

申し訳なさそうな苦笑にも、

薫は裏があるような気がし始めていた。


「ごめんね、エリーちゃん!

 ちゃんとナツもハンデは付けるから!」


自分の名前を一人称にする女......

増々疑念は確信へと変わり始めた。

信用ならない女の厚かましさに徐々に憤りという名の勇気が

日陰生活の長い少女にも沸々と湧いてきた。


「ちょっと待て......さっきから何なんだ...!

 お前は何がしたいんだ!」


威勢の良い声が弾け飛び、

意外そうに驚いた吉沢の顔はまたゆっくりと元の優し気な顔に戻る。


「えっと、説明が足りないだろ~!

 ってことだよね。

 まあ、一言でいえば勝負がしたい!」


「......勝負?」


唐突な持ち掛けに薫の細い可憐な眉も吊り上がる。

ゲームではお馴染みな展開を三次元でされることが更に癪に障るのだった


「実力主義なんだよね、ここって。

 ナツ自身がそうで、とりあえず今はナツが成績トップでリーダーだから、

 部の方針もそうなってるの!」


話の見えない紹介に更に怪訝そうな顔で首を傾げる。


「だから、うちの入部の仕方も変わってさ~

 とりあえずは試合してみて筋が良かったら、入ってもらうことにしたのっ」


そうして腕を組み、目を閉じて

現トップの女を整理してみると、改めて身勝手さに気付く。


「いや、何を勝手に入部希望にしてるんだッ!

 私は見学をしに来ただけだ!

 そういうことなら、喜んで辞退させてもらう!」


心では二度と来るものか、と道着に手を掛け

脱ぎ去って制服を取りに戻ろうとした時、

目に見えぬ縄を薫は掛けられた


「......ふーん、逃げるんだ」


ピタリと動きが止まる。

絶大な効果があることを知ると、追い打ちをかけるように

挑発は続く。


「いやぁ、正直さ......

 部の方針とかじゃなくて個人的興味なわけなの。

 ちょっと自慢になっちゃうけど、ナツって大体スポーツとかで誰かに

 負けたことないんだよね。

 同学年はもちろん上級生...あと男子にも。

 流石にそんなことにいつまでも浮かれてる訳じゃないよ?

 今年なんかも高校生にもなったんだし、おしとやか見せるために

 体力テストも手を抜いてたしさ......」


背は向けつつも目線だけは合わさっていた。

火花が目に見えるかのような闘志のぶつかり合いは

一層、室内の温度を上げ始めた。

涼しげな顔で正座をしている者達の顔も曇り始める。

足に痺れがきてひっそりと体育座りをする者も出てきた


「で、そんな中ナツ史上初めて自分以外で

 チヤホヤされる人物を見た気がするんだよね......誰だったかなぁ」


わざとらしい態度に目元の険しさは深まる。

それに相対してあざ笑うかのように変わらず穏やかなのは

吉沢千夏である。


「真剣に観察するわけないしさ?

 格下の人を。

 未知数なアナタの実力が知りたいわけ。

 だからさ、実力は今に知ればいいじゃない?

 そう、ここで。

 この試合でさ...!」


どっしりとした構えが取られる。

語る小賢しさからは程遠い、実直に分かりやすい戦闘態勢だ


「私はこの競技をよく知らない。

 そんな初心者相手に勝って――」


「いいよ、いいよそっちは。 ルール無用で構わない。

 こっちはルールに則ってやるから、良かったら体感で学んでいってよ」


台詞だけを切り取れば真摯なようにも思えるが、

実態は今すぐにでも、かかってこいよのジェスチャーをしてきそうだ。


明らかに喧嘩を売られている。


買わなければいくら女だからとは言え、臆病者のレッテルを貼られることは

避けられない。

ルール無用なら、目の前のお調子者を

泣かしてやるくらいのこともできるかもしれない。



握る拳に力が入る。

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