部活探し編・11
「弟もせっかくだから運動神経が悪いわけじゃないし、
サッカー部に入った。
生まれつき影が薄いことが幸いしてか、
一慶のパスカットが失敗したことは今まで一度だってない。
マークされてるとも知らずに呑気にパスを受けようとする奴から
ボールを奪うだけなんだからな」
何ということだ
影が薄いから半透明に見えたというのか
自分の目の下の影の濃さとは真反対ではないか
「俺には攻めの技術が、
弟には守りの天賦の才があった。
二人揃えば弱点などない......能力部分だけを見れば!」
また声を張り上げたが、今回は厳かな感じだ。
静かな怒りだ
「しかし俺達にはくだらない別の事情でスタメン入りを果たせない理由があった。
俺は長い間活動できなかったこともあって技量を疑われている。
そんなものはプレイを見れば一目瞭然だが、
当然建前の理由だ。
奴らが俺を一軍にしない理由は......!!」
プルプルと震えだす。
噴火寸前だと察して咄嗟に耳を押さえたが、
聞こえてきたのは蚊の鳴く様なか細い声だった
「こ、この顔さ......
顔面凶器とまで陰口を食らってる、この顔だ...!」
打って変わって弱々しい声に調子が狂う。
ハッキリ言って情緒不安定のご様子だ、
暗がりではその顔面の恐さが分からないことは幸運なのかもしれない
「長い間いなかった理由も暴力団関係の人間と
つるんでたとか、根も葉もない噂がもはや一年生にまで
広まっている!!
一軍はその部活の顔だ......
そこに俺の様な男がいてはならないってことだろうよ...」
溜め息をついて目線を足元に落とした。
目もくれず男の腕はゆっくりと弟を指した
「そしてアイツは見ての通りだ。
ぼんやりとしてて俺の後をよく着いてくるから、
背後霊か何かだと思われている......
存在が薄いんじゃ連携プレイは出来ないだとか言いやがるんだ...
要は俺達の実力は確かなものであるのに!
体裁が俺達を阻んでいるッ!
言い換えれば不幸ってやつさ...
何も望んで生まれはしなかったが、自分のことを
否定したくもねえさ......!」
悲しき兄弟は俯き、悲嘆に暮れている。
本当に同情する
こんな状況でなければ
「どうしようもないことばっかだ。
でもなあ、それでも強く生きてやろうと思っている!
俺達より不幸な人間なんざこの世にごまんといる!
そう思って前向きに生きたい......
なのに! なのになのになのにッ!!
てめぇのような幸せに包まれた人間がいることも事実!!
そしてそれがすぐ目の前にいることが許せん!!」
銃口でも突き付けるようにこちらを指差してきた。
「おい、てめえの連れの小さな女。
つい最近まで姿も見せなかった、あの大屋敷の娘らしいじゃねえか
それもッ!!
お前のおかげで不登校をやめたんだって?
金持ちでそれでいて謎の多かった女が割と愛されキャラだった
って学校持ち切りの話題よ......気に食わねえ!!」
今度は親指を下に指した。
地獄に送ってやるとでもいうのか




