部活探し編・9
少なくとも自分に敵意を向けた二人組であることは確かだ。
弟の一慶とかいう奴も静かにではあるが笑っている
それにしても背に蹴りを食らって目の神経でもやられているのだろうか、
弟の方は半透明のように見えて仕方ない。
「俺達がなんでこんな仕打ちをお前にするか分かるか?」
「そ、そんなの――」
「分かる訳ねえよな?
ああ、教えてやるとも」
一切こちらの言い分は求めておらず、
一方的に話したいだけのようだ
「あれはいつだったか......
そう、騒々しい夏のある日だったかなぁ」
語り出しから長話の予感がした。
人を突き飛ばしたり、蹴っ飛ばしたりする殺伐から一転
悠長なものである
「その騒々しさはセミの声だとか、
プールや海に向かう子供たちや家族の嬉々とした
可愛い喧噪なんかじゃなかった......
鉄と鉄が打ち合わされ、重機がミシミシと地面を踏みしめる音さ」
薄暗い中でも分かる強面には似つかわしくない
語り口で朗々と語る話の内容には、どこかで聞いたような
何か覚えがあるような気がしてきた。
「要は建築物の産声っつーのかな......
作り物は完成したら何も語らねえだろ?
だから騒がしい内はそれの子供時代みたいなもんで、
俺も極力腹を立てたり、気にしないようにしたわけだ...
でもよぉ......」
語る男はうなだれると静寂も舞い降り、
どうしたものかと弟を見ると
弟の方も困惑しているように見えた。
半透明なので分かりづらいが
なんて他に気を取られていると
「うるっせええったらなかったんだよおお!!!」
とんでもない大声で体が飛び上がった。
それも地下空間なので尚更響く
「もっと静かにできねえもんかなあ!?
いくら急ぎの住宅建築にしたってよぉ!?
周りへの配慮っつーか、近隣住民の鼓膜の負担っつーか、
そういうもんをまっったく考えてない!!」
激昂の圧に肝が冷え始めた。
これから自分がボコられる以外に色々の事態の想定から
心配事も脳内で沸々とわき始める
「そもそもデケェんだよ!
音もそうだが、敷地!!
そりゃ急ぎでそれだけ広い土地に家構えようとしたら、
そらうるせえってのッ!」
五月蠅いを連呼する、目の前の男こそうるさいのだが......
段々哀れに感じられてきた。
それは親近感にも近いものだ
「おかげでよぉ......!
家にいられなくなって、良い機会だ!
そうだ! 外で部活の練習して上達して!
エースになってモテモテになってやろうってなあ!?
サッカー部のエースなんて絶対リア充確定だよなあ!?」
ここで身バレし始めているが、
動じずに話を聞いてやる。
というか薄々コイツが拳法部どころか吉沢さんと
何の関係もない連中だということは気付いていた。
それに自分はもっと大変なことに勘付いてしまったかもしれない
こいつ等の家とうちの家がめちゃくちゃ近い可能性である




