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部活探し編・8

ひんやりとして薄暗く、ジメジメとした感じは埃臭いせいなのか

ただ体育館の地下だけあって視界の悪さも相まって、

どこまでも道が伸びている気がする。


まるで洞窟だ


「お子様一人ここに寄越すような薄情な真似をしなくて済んだか......」


暗所恐怖症ではなくとも本能的に鼓動が早まる中、

言い聞かせるように独り心細くも歩く。


光が奥の方でぼんやりと見えてくる。

やはり部活はやっているようだ


しかし、こうも暗い道の先でやるものだろうか

誰かが明かりを付けてもよさそうだが、

生憎今は見える光だけが人の気配を感じさせるのみ。


深海で疑似餌におびき寄せられる、

チョウチンアンコウに食われる小魚のようだと自嘲しながらも

自分は近付いて真相を探ることしか出来ない。


照明のスイッチは特に見当たらなかったし、

上の階にあったのもどれが下の階のものか分からない。

勝手にいじるのも良くはないだろうし、

何よりそんな度胸はない


暗闇と孤独が心の余裕を蝕んでいく。


早鐘を打ち、

身体全身を揺らすかのような動悸に喘ぐ。

ゆっくりと歩いて来たとは思えないほどの息切れをして

ようやく、光にたどり着いた。


ドアから漏れる弱い光が自分を引き寄せていたのか

すぐにはドアの中を覗かず、周りの様子を確かめる。

何か武道系の部活やスペースなら看板のようなものがあるはずだ


ただ、そういったものは見当たらず

近くのもう一つのドアから差し込む光と空気は外に繋がっているようだった。

外への扉は重く固く閉ざされている


増々追い込まれるような気持ちのまま、

一旦深呼吸をして気分を落ち着け、


「いざ......!」


と意気込んで覗きをしようとすると、



「やあ、待っていたよ」


聞こえた声は思ったよりも低く、

そして

背後からしたものだった


勢いよく振り返ろうとする。

そして


「ああ、待ちわびた 待ちわびた」


ドアの中からも声がした瞬間、

自分は突き飛ばされて後ろの声の主の足元に倒れた。


その時、突き飛ばした前の奴と

不敵な笑みを浮かべて見降ろしてくる後ろの奴が映った。

二人とも見覚えのない男だった


これが拳法部流の挨拶だというのか?


「そんなはずは......」


「ああ? どうした?

 本当は可愛い女の子が出迎えてくれるはずだったのに、

 なんでって感じだなぁ?」


「!!」


その発言でこいつらがここに自分が来た理由を知っている事と、

そして待ち構えていたことを理解した。


では本当に荒手の挨拶なのだろうか


「まあ、誰だって聞きたそうな表情してんで

 自己紹介させてもらうがよ......俺はおせっかい焼きの糸田、

 そして前にいるのが弟の一慶って言うんだがよ」


要らぬ自己紹介を終えると、

ズイっと顔を寄せてきた。


「今日の俺のお節介な一言、


 お前調子に乗りすぎなンだわ」


そう言うが早いか、

鋭い蹴りを背に喰らって外ドアにぶつかるまでスライドした。

金属音と暑い空気が一瞬広がる。


「うっ......」


「おいおい、声は我慢しなくていいぜ?

 俺達も鬼じゃねえからよ......

 痛みに呻いたり叫んだり...何なら助けを呼んだっていいぜ?

 まあ、来るのは女の子しかいねえだろうがよ!!」


ひとしきり叫んで笑い出した。

何だというのだこいつらは......?

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