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部活探し編・5

「今日はバスケ部にいくぞ!」


「お、おい...もう帰ろうぜ」


「なんだビビルよ、ハルっておるのか?」


「それじゃあ俺の苗字が大木になるだろうが」


「オオキ......? オーキードーキー?」


「え、なんだって?」


「答えは着いてきたら教える」


そんなこんなで来てしまいました、体育館。


ここではボールが弾む音が響き、床を揺らしているので

更に俺の神経は過敏になり、トラウマを呼び起こすようだ


「Okie- Dokie?」


「まさか軽い調子で大丈夫かどうか聞いてるなら、答えは

 NOです」


帰ろうとする俺の腕をむんずと掴まれた。

ただ、いつも手を繋ぐように裾を掴んで来る花山の短い腕にしては、

中々にパワフルだ


俺を捕まえるためだけに急激に成長したのかと、

バッと振り返ると


「ハルが見に来てくれてるなんて張り切っちゃおうかな」


語尾に黒いハートでも付いてそうな上機嫌美咲さんであった。

俺は幼馴染が部活に入っていたことも知らなかったのだが


「応援してるよ」


僕はキメ顔でそう言う他なかった。



「あの女の部活の見学などしたくはない。

 だが! ハルに傍を離れて欲しくもない......そこで!」


背中合わせで体育館の中心で二分されている、

バレー部とバスケ部をそれぞれ座って見ることになった。

小柄の花山を背にしていると随分頼りない背もたれに感じる


「両腕組む必要あるか?

 このまま立ち上がるってのかよ」


「どこかへ逃げたり、不審な動きを避けるためだ」


花山は俺が見たいアングルは取らせないつもりのようだ。

お見通しであるのは同類の証だ、悔しい


何より、こう密着していると美咲のヤキモチが怖い。

うちの幼馴染の場合は可愛いもので済まないから冗談じゃない


「お、始まったぞ。

 私はBチームに賭けているんだ」


当然のように穢れ無き部活動に穢れきった賭博行為を持ち込む

上級階級の娘を懲らしめてやろうとした瞬間、

バレー部の方も試合が始まってしまった。


今日は花山にとっては両部活とも念願の試合形式の練習のようだ。

以前から賭けがやりたくて、などと言う動機でないことを願うばかりだ


そもそも誰と賭けを争っているんだ......?


「まさか、その賭け俺も参加させられてるのか!?」


「うむ、楽しく見るためにな!

 ハルはAチームだ」


「勝手なこと言いやがって!

 掛け金は!? 情報は!?

 俺は見てもいないどころか、見れもしないチームに、

 どれだけの賭博を持ち込まれて――」


「治雄くん?」


背中に向けた顔をすぐさま目の前に向けると、

美咲がいた。


「今の見てた? 私のスパイク」


脅迫されているかのような笑顔に俺は頷くことしか出来なかった。

略称でも愛称でもなく、くん付けで呼んでくるなど今まで無かった。

これ以上刺激するのは自殺行為だ、次ぶっ叩かれるのは俺の頭かもしれない


「ん? 何か言ったかハル?

 って、ああ! 逆転される!」


何も知らない花山が俺が今、どんな真剣な気持ちで目の前の試合を見ているか

など気にすることはなかった。


少しでも美咲の機嫌がこれ以上悪くならないようにと、

美咲チームの勝利を望んでいる。

海外で活躍するスポーツチームを現地にまで行って応援する、

サポーターよりも熱烈に......!


故に震え上がるような事実が目に嫌と言うほど飛び込んで来る。

美咲はウィングスパイカーという配役なのだろうか、

身長は他の選手と比べるとあまり高くないが跳躍力が凄い、

そして振りぬくスパイクの力の入り具合が更に凄い。

それを物語っているのはボールを引っ叩く音だ


悲鳴を上げるかのようにこちらまで届いて来る高音、

すぐさま床に叩きつけられて破裂音の様に響く音は試合中止むことが無い。

衰え知らずであることの裏付けであるならばスタミナも尋常ではない


跳躍力にスタミナ、

この二つに共通している事柄で自分が覚えていることがある。


それがただの偶然であることを願い始めている自分さえいる。

その恐怖の震えが背後の花山にも伝わって、

扇風機越しの声になっている


「おおお、じじ地震かああ?

 で、でももバスケ観戦やめられないんだががが」


何かと言えば、ただ一つ。

体力テストで花山に負けた要因であることだ


総合的な運動能力であれば美咲が劣っていることはまるでない。

ただし、その二つに関しては敵わなかった。

考え過ぎかもしれないが人間というものは、

一度そうだと思い込むとそれ以外の可能性を排除してしまう


何より最近、ハイテンポラーニングなる外国語教材を使い始めたらしい

彼女の行動に疑惑は確信へと変わった。


外国語、厳密に言えば英語は学力において唯一、

花山に負けている分野だ


「なんという執念の女だ......

 いや、そう昔からそうであったのか......!?」


口に出さずにはいられない衝撃の事実に打ちのめされた俺にも、

紅白戦終了のホイッスルは聞こえた。

どころかそれは何より待ち望んだものだ


今度は反対に自分の方から美咲に駆け寄り、


「すっごい感動した。

 その感動が収まらないから、外走って来る」


と、言い放って俺は体育館の外へと出た。

引っ切り無しの、あの破裂音から逃げ出したかったのだ。

連れの女をすっかり忘れて逃走した



翌日から俺がバレーボール部に近付くことはなかった。

まだ続きます。

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