夏が来る
平成最後の投稿だぁ!
体力、知力と二つの対戦があって
結果勝敗数で引き分けになってしまったことを花山はどうやら
とても悔やんでいるらしい。
まあ俺もあいつらの教師をしながら思ったが
知力は圧倒的な差をつけられてお嬢様が負けたことは哀れなようにも
情けなくも感じる
少しは
いや、とても反省した方がいい
俺は贔屓せず公平に、
それでいて自身の意思も尊重して
しっかり宿題を出して置いたのだから
教師としての非は無いはずだ
...そのはずだ
とは思いつつも
いつもスーパーボールの様に跳ね回っているくらいのエネルギーの塊が消沈していると
やはり気になる
能天気には似つかわしくない頭を抱える姿を見て
声を掛けようとすると
バッとこちらを振り向いた
「おおっ...何だよビックリした...」
「ああ、すまん...
今ハルが私にいやらしいことをしに近付いてきた気配を感じたので、つい...」
「ねえよ」
相変わらず真面目に不真面目なことに耽るのがコイツの日課のようだ、
つまり平常運転だった
「ったく...心配して損したよ...」
「何っ!? ハルが私の――」
「そりゃそうだろ
事情を知ってれば見事に勝負を挑んで置いて、
その相手の美咲に完膚無きまでに叩きのめされたとなったら
さぞかし苦しんでるんだろうなぁって思うのが普通だ」
出来るだけ嫌味っぽく言うと
「ウッ...」
即効性の睡眠薬でも飲まされたかのような反応をして
机に倒れた。
「ふん...どうせ、大して気になってないんだろ?
下らない考え事の続きでもしたら良いさ」
そう残して去ろうとすると
また即座に上体を起こして呼び止めてきた
「いや、それは違うぞハル」
「ん?」
振り返って見えた花山の顔には確固たる決意が表れていた。
といっても大真面目にしてるところが笑ってしまうような女だ、
また戯言をおっしゃるに決まっておる
「私は真剣に考えていたぞ、宿敵である米田とかいう女を出し抜いてやる方法をな」
「ほう?」
馬鹿にして構えていると
割と頑張って練ってみました、
という感じが伝わってきて興味が出る。
この前のこともあって生徒の回答を聞いてあげる先生のような心持ちで
花山の話も聞くようになった
「じゃあ、話して貰おうじゃないか」
その気になると空席のところをお邪魔して
隣の椅子に座る。
ちなみに昨日期末テストが終わったということで
急遽席替えが行われた
予告せずに起きたイベントに
対する過激派(主に一人)であるトップの花山が
先生に抗議をしたが
俺がなだめたことによって渋々、
決行された。
そこで俺が必死になってアイツを鎮圧したのは言うまでもない、
隣のご本人の花山とかいうドうるさい女と離れられる機会なのだから
それにあわよくば角田さんの近くに...
などと野望も抱いてみたが
ほんのすこ~し迷惑な隣人と離れ、
憧れの学級委員長さんに近付いただけであった。
まあ、そんなものだ
くじ引きで決められる運命なんぞ...
「というわけだ!」
「......へ?」
すっかり淡い期待を打ち砕かれたことによる切なさに浸っていて
目の覚めるような声も耳には入ってこなかった。
「ああ......で、簡単に言うと?」
とりあえず、さも聞き届けた上で要約を求めるようにした
のだが
「んん~...聞いてないなぁ、私の話を...」
幼稚園児のように頬を膨らませてしまった。
見た目にも行為にも見合ってない鋭さがコイツにはあるから
勘の良い子供は好きになれそうにない
「悪かったって...でも結構長いこと無視してて
お前が気付かなかったんだから、
話が長いのも悪い」
「ぐぬぬ...」
自分でも意地が悪いと思いつつも
相手の非も指示していく。
この女と接しているとどうにも自身もガキっぽくなる
「うーん、では簡単に言うとだな...」
本当にろくな身体的な成長もしないで高校生になってしまった
同級生を眺めること数分、
納得したような声が聞こえて我に返った
「うむ! まとまったぞ!」
「...ああ、やっとか」
「何をさっきから呆けているのだ!
発表するぞ!」
耳元で怒鳴ろうとするのを抑えながら
首を縦に動かす。
「よし、では私が提案するのは...!」
無駄に間を作る演出が入ってから
「あの憎き米田も行っていない部活を、
私が先取りしてすることだ!」
結局、突拍子もない戯言を聞かされた
「はぁ~...」
「な、なんだそのため息は」
「あのなぁ、それがどうして美咲と比べての優位になるかも意味が分からないし
そもそも今から部活なんて入れる訳ないだろ」
「何だと!? スポーツの夏やら読書の夏やら日本では言うではないか!」
「それは秋だし、お前は馬鹿さ加減がワンシーズン先を行っちまってるんだよ」
なんて軽い突っ込みを入れて終わる話かと思いきや、
「で、では! どんな部活だろうともはや入部は出来ないという――」
「そんなことないよ」
「「え?」」
思いもしない第三者の介入で話が膨らんでいくのだった。
閲覧ありがとうございましたぁ!




