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放たれた宣言


「では、私の思い通りになってもらおうか」



そうゲスな顔で手をワキワキと動かしながら俺に迫ってくる。

ヒッ、と声にならない声が出てこれからあられもない姿にされる少女のように身を捩った。


が、冷静になって近づけてきた顔をバシッと手の平で受け止めた。



背後のメイドが少し反応したが、

また拘束まではしないだろうと見当はついていた。



「残念ながらお嬢さん?俺はお前を別に好きじゃない...嫌いでもないが」


とりあえず嫌いでないと付け加えたのは念のためだ。



「そもそも、どうしてそういう結論に至ったのか...考え、お聞かせ願おう」



手のひら制止から解放してやると、すぐさま顔がくっつくギリギリまで近づいてきた。



「それはお前が屋敷の前に来る事、100回目だったからだぞ!!」


「100回...?」



それが何だというのだろうか



「よく分からんがお前は100回物を届けてくれた者を好きになる決まりでもあるのか?」


「違~う!!」



両腕を上に突き上げて怒ってみせてるようだ、非常に子供っぽい。



「お前は100度目で家を訪ねずに、遂には現れなかった男の話を知らんのか!?」


「...ん?」



断片的な情報だが、確かにどこかで聞いたことのある話だ......。

何という話であったか...


「うーん、覚えはあるような...」


「そうであろう、そうであろう!?」



話がやっとここにきて通じた事に、はしゃいでいるようだ。


「でも確か、それはある男がある女を好きになって結婚を申し込むが、

 親に許されず、終いには99度目で結婚の許しを請う訪問を止めてしまったという話だろ?」


「おお!分かっているではないか!!」




「でもその男である俺が、そもそもお前のこと好きじゃねえぞ?」



そう軽く放ったその一言に、



「え?」



こっちが驚くくらい後ろのメイドも、目の前の女もドン引きしていた。



「何か間違ったこと、言ってしまいましたかね...?」



すると周りの全員が崩れ落ちた。



「えっ、えっ?」



こちらも状況が分からずあたふたしてしまう。




「なんということだ...」


花山はそうつぶやいた。



「「「私たちもその盲点にまるで気付きませんでした」」」


と、後ろのお三方。

それだけ息ぴったりならメイドなんかじゃなくても、芸能界でやっていけそうなのに......。



震える令嬢、涙ぐむメイドたち。

自分の周囲を俺はたった一言で悲しみに満ちたものにしてしまったようだ。



し、しかしそんなものはあっちが勝手にそういう空気にしただけで

俺は何も悪いことなど、断じて言っていない...!



そう、言ってないはずだ......



そんな自覚さえ揺らぐほどに悲壮ムードは凄まじかった。


しかしそんな勝手に作り出した空気を破るのも、またご令嬢であった。



「あ!!」


何かが破裂したような張った声に、俺もメイド達も体を強張らせた。



「そうだ、まだ終わっていない...まだ始まったばかりなんだ!!」


とてつもなく嫌な予感がしてきた、

咄嗟に自分の荷物の置き場所を確認する



あっ、あった!



「そうだ!私がっ!!」



荷物の元に俺の全速力で駆け寄る!


ああっ!!逃げられない!



一瞬で俺の前に立ったメイド達に阻まれて、




「ハルに好かれれば良いんだッ!!」



その一言を許してしまった。


ブックマーク等よければ、どうぞ。

暇つぶしに自分の他の作品も見ていただけると嬉しいです。

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