家庭教師編・24
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「確かお前は突き抜けたような明るさがあったが、
たま~にセンチメンタルになる日もあったよな?」
何も言わずに動かなくなった。
気に留めることもなく続ける
「それでお前は確か小学校の昼休みの外で遊んでる時間に急に俺と二人にするようにしたんだ、
確か」
随所の詳細な記憶は流石に抜け落ちているから
映画監督のように情景は色付けしていく。
「そこであの時の美咲ちゃんは言ったわけだよ、私が好き~?って」
現在の美咲ちゃんが震えだしたが
変わらず続ける
「当時はまぁガサツで男みたいな奴で、加えて言うなら子分みたいな扱いをしてきた
あの美咲ちゃんが年相応、性格相応のあざとさを突然引き合いに出してきたから
当時の僕ちゃんは驚いたさ」
目の前の幼馴染が髪の毛の間からガンを飛ばしている気がするが
池の周りをグルグル回るP点のように減速せず続ける。
「新手の虐め方かな? と思った俺はそりゃあ、好きじゃないです。
と言ったわけだな
当時小学生で同級生の女の子に敬語で」
自分の家の様にくつろぎだして悠然と語る。
「そしたらあろうことかガキ大将美咲ちゃんが
わ~ん!
なんて泣いて校舎に逃げちゃったんだもん。
俺の返答後即座にぶん殴られたことより驚いたもんだね」
カスカッスの裏声で美咲の声を真似たのは
喉を傷めた迫真ぶりだったとはいえ、少し調子に乗ったかな?
とチラリ目を開いたが
当時のような暴君ぶりが抜けたレディは
眼力で圧倒してくるだけで手は出して来ないようだ
......出さないよな?
「ご、ゴホン...
まあ、それで後に俺と俺の親友は君の親衛隊に罵詈雑言の嵐を食らった訳だが!?
当時の優しい僕ちゃんは心に傷を負いつつも!
可愛いお隣の幼馴染にされたことだと思って許したわけさ...」
こちらが受けた隠されたトラウマを強調しつつ、
相手を上げることも忘れない話術は
怒れる雌獅子の激情を抑えるに留まらず
シュンとさせた
「それがまさかねぇ...再来するとは思わなかった......」
思わせぶりに向けた視線は
ガッチリ美咲の瞳と繋がった。
まともに初めて向かいあったような感じに
つい逸らす
ここに来てイケイケだった雰囲気に
不思議な沈黙が広がる。
こちらを黙らせるような苛立った気持ちをぶつけられたわけでもない、
口を噤んでしまうような悲しく冷ややかな色が見えたわけでもない。
だというのに
次に言い出すべき言葉が見当たらない。
それは多分...
「じゃあ」
きっと
「今回もダメなの?」
コイツの想いにハッキリと気付いたことを
自白してしまったようなものだったことに
今分かってしまったからだ
彼女に
膝を抱えて小首を傾げて
確かに
告白の答えをせがまれる形になった。
いや、してしまった
閲覧ありがとうございました。




