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家庭教師編・XX

昨日に投稿するのを忘れてしまいました...

「さあ、帰ったらみっちり勉強だからな。

 テストは近いぞ」


帰りの車内で念を押して置いて

宿題増量の件が自然になるように仕向ける。


「そんなに力まずとも私の才能ならば大丈夫だ~」


「どこから、その自信が湧くんだよ...」


ゴロゴロ転がる小さなお嬢は恐れを知らないご様子だ。

テストなど今回が初めてだからこその余裕と言ったところか


そう考えると赤点になったらどうなるのか少し見たくなってきて

敢えての教育放棄も脳裏を掠めたが、

良心がそれとなく咎めた


「ちゃんと赤点くらいは避けられるようにしてやるから...

 しっかりやるんだぞ?」


「うむ~」


絶対に右耳から入って左耳から抜けているが

コイツがどうなろうと、もう知らん。


辛い経験も糧になるのだから

どちらに転んでも世間知らずちゃん、には良い薬だ


逆に赤点を避けてしまった方が慢心などして、

次のテストの赤点で泣きつかれそうだが......


今回だろうと次回だろうと

コイツの頭では...



そう思うと

急に本職で家庭教師をやっている人の存在の苦労が身に染みて分かった気がする。


俺は家庭教師でも親に頼まれたわけではなく本人の希望でやっているから、

成果が上がらなくとも良いが

本来の家庭教師はしっかりと生徒の学力を上げなければならない。


その際に生徒の地頭が絶望的な場合、

どれだけの心労が掛かることか......


お宅のお子さんはどうしようもないです、

とも言えず

私の力が及ばないばかりに...

と頭を下げることしか出来ない


それを思うとバイトでさえ

家庭教師なんてやるものではない、

少なくとも俺に出来るものではないことがよく分かった。



更に俺の認識は飛躍していく



よく考えれば、目の前でアホっぽくヘラヘラとゲームの画面を見る女が

もし自分の娘だったら...


どれだけ悲しみに暮れることか


コイツを知り、共にクラスメイトとして

お隣さんとして

仕方なく共に過ごしてきたが

花山の親御さんを見たことが無い。


ちょっと前までは仕事の多忙さからだろう、

くらいにしか思わなかったが

今は違う


ハッキリとこの女がダメ人間であることが分かるからこそ

親はもう見捨てたのではないか、

そんな残酷な現実があるような気がしてならない。


コイツの駄目さ加減は周りの人間に世話を焼かせるようにしてしまうほどだ


故にあの屋敷の従者は花山を甘やかしてばかりだ。

悪い、人たらしそのものだ



そう思うと......また一つ、

確かなことに気付く。


駄目だコイツ、早く俺が何とかしてやらないと...


赤の他人の俺が出る幕では無いかもしれない、

どころか俺が手を貸す義理もない。


それでも


冷静にこの箱入り娘に向き合ってやれるのは俺くらいのものだ。

他の奴らでは甘やかすか...非情だが見放すばかりだ


ならば


付き合ってやろうではないか


こんなどうしようもない恵まれた家系からゴマ粒のように大したことがなくて

ちんまい奴だって、

変われるのだということを


せめて成績不良者として廊下に張り出される刑だけは回避させてやろうじゃないか、と


荒波に揉まれて独りで生かすにはまだ先でも良いじゃないかと、と


そう思って

最後まで花山の家庭教師を務めることを静かに決めた。


一度思い返してみれば

そんな自分もアイツの駄目さ加減にほだされているのではないか、

とも考えられるが

それでも良い


ただ目の前に出来の悪くてどうしようもない奴を見かけたなら

手を貸してやるくらい良いではないか


それが、その落ちこぼれの策略であるなら

より良いではないか


そこまで意図しているなら見込みがあるくらいだ。



そんな達観をするようになるまで俺は変わった。

いや、コイツに変えられた


だったら返してやろう


ご令嬢から受けた変格を今度はそのままそっくり


俺が教育してやる!



「花山」


「なんだ~?」


ゲームから目を離さず聞き返す女に熱い視線を送って

念を押す。


「頑張ろうな、テスト。

 俺もやれるだけのサポートをしてやるから!」


「お~、頼もしい~」


温度差があることも無視して腕を組んで一人頷く。

そうだ、俺がやらねば誰がやるんだ


ひとしきり自身の胸中で納得すると

流れゆく空を眺めた。


未だ見ぬ花山のお父さん、お母さん


アナタ達のダメダメ身も心も幼女娘は俺がしっかりとマシくらいにはしてみせます!



決意新たに、

夏の壮大な雲は淀みなく白く澄んで見えた......





「それにしてもしっかり美咲の調査やってるんだろうな?

 やってなかったら家庭教師やめるからな?」


現実の過酷さを教えるためだ、

突然やっぱり無理だとか思ったわけじゃない


「あ~、それなら私の部下にやらせてるから問題ないぞ~」


自分でやれよ


やはりコイツは自力で変わらねばいけない気がする...

この先、大丈夫なのか......?


閲覧ありがとうございました

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