家庭教師編・16
「ほう、なるほど。
あの粘着女のことで悩んでいたのだな?」
とりあえず、メイド達と起こった小競り合いを花山に止めてもらって
事情を話した。
「まあ、昔にアイツを泣かしてる訳だから俺が悪いんだけどさ...
その理由が思い出せなくてな」
「いやいや、何があったかは分からなくとも
全てあの女が悪くて
ハルは何一つ悪くないと思うぞ?」
そう満面の笑みで言って、
俺の好感度を上げようと目論んでいるのか
素なのかは知れないが
ハッキリしたのは相談相手にコイツが向いていないということだ。
真相を打ち明けたのは失敗だったか......
案の定、すっかり勉強をすっぽかして
俺の話し相手として胸を張ってサボっている。
「うむ、そうに違いない」
自己解決して勝手に満足すると席を立つ
「おい、どこ行くんだ」
「ん? ああ、気にしなくて良いぞ
私からの激励を噛み締めて、ゆっくりすると良い」
そんな人の好さそうな事を言って向かう先はきっとゲームに違いない。
素早く前に回り込むと両脇に手を入れて抱える
「んなッ! 何をする! 私は赤ん坊ではないぞ!!」
小さい弟の相手をしていたことを思い出しながら、
軽々と同年代の女子には思えない幼児体型を席に戻した。
「こらっ! 少しくらいは休憩があってもいいではないか!」
「ああ、そうだな
お前がちゃんと真面目にやったらな。
ほら、全然問題解いてないじゃないか」
「ぐ、ぐぬぬ...」
脇のガードも物事の詰めもコイツが甘いことは
嫌というほどご存知だ
対面の席にドカッと座り直すと
しっかりと花山がやっているかを監視する。
そうすると流石のワガママお嬢様も大人しくちゃんとやり始める
子供の世話の仕方を先取りしている様な気持ちで
目の前の女を扱っているというのだから、
コイツに好意を持たれても今更近所の小さい子に懐かれるようなものだ。
どんなに頑張って大人っぽい告白をされても、
幼さが抜けないであろうことが容易に想像がつく。
考えるだけでも少し笑えてくる
...まあ、それでも
最近は真剣な顔つきだったり黙っていたりすれば
ギリギリ中学生くらいには見えたりくらいはするか
そんな保護者の立場で花山を見ていたら、
「出来たぁ~!」
テストを終えたようだ
本当にあっという間に思えた。
......うん、やはり早すぎるな
すぐさま花山がソファーまで行ったのを尻目にテストを分捕るように
手に取って見ると
「......おい、なんだいこれは」
「ん~? 頑張ってやったであろう?」
ピコピコと既にゲームの効果音がしてくる。
「ほぼ、やってないように見えるが...?」
くつろぐご令嬢にゆっくりと歩み寄る。
背後から迫る俺の殺気に奴は気付いていないようだ
「う~む、それはハルが分からない問題は飛ばせ、という指示を忠実に守って――」
それ以上の言い訳も許さずに、
その大好きなゲーム機を取り上げてやった。
「あ!」
「没収だ、ちゃんとやらない奴には不要だからな」
「ま、待ってくれ!」
短い手足をバタバタさせて何とか俺から愛機を奪おうとしてくるが
まるで取れそうにない。
そういったイジメの経験が十分でないお嬢様は段々と涙目になってきた。
どれだけコレがそんなに大切で好きなんだ...
「かえしてぇ~!!」
「返して欲しかったらちゃんとテストを...」
甘え切ったその根性を叩きなおすためだと、
大して心を鬼にもせずいじめっ子のように
小さい花山を戒めていたが
その顔を見てると徐々に何かを感じ始めた
同情なんてものは一切沸いてない。
ただ、ぼんやりと広がる感覚があった
それが何か気付いたのは、ジャンプに疲れて
俺の腹に花山が寄り掛かってきた時だった。
「...そうだ」
声にまで出たのは探し求める答えのヒントの発見があったからだ。
それは美咲が泣いた原因に「好き」というワードが密接に関係していることだ
閲覧ありがとうございました。




