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家庭教師Xの後編

強引なる舵取り

「そ、それは

 美咲が真剣に勉強してるのに

 俺の事で心配させたら邪魔しちゃうなって...家庭教師として思ったんだよ」


嘘で紡ぐ道はカーブの連続、

ハンドルを全力で切っての回避だ!


「ふぅん......」


どう見ても目が信じていない!

それでも山場は越えたと見ても良いか!?


「そういうことにしといてあげる」


「......よし」


「え?」


「何でもないです」


安堵のあまり危うく、と言ったところではありましたが

何とか切り抜けた!

これはこの後に沈黙という名の小休止が入ることでしょう



「じゃあ、今度は楽しそうにして。

 アタシの家庭教師が出来て嬉しいでしょ?」


......ん?


「せっかく、うちに上げてあげたんだから

 場を盛り上げてよ」


おいおい、嬢ちゃん...ちょっと小生意気じゃあないかい?


「生徒にやる気を出させるのも家庭教師の、務めでしょ?」


......


「そんなんじゃ彼氏面もさせてあげないよ?

 ねえ、ねえってば~」


プッチーンㇷ゚ㇼn


そこで完全に抑圧されていたこちらの言い分が口から溢れ出そうになるくらいに

トサカにきた。


「美咲」


「何? 私と居る方が楽し気にしてくれる話題を思い付いた?」


「帰る」


「え」


教材をガバッとカバンに入れると立ち上がって速攻で部屋を出ようとする。


少しこっちが押され気味になったら調子に乗りやがって

もう帰っちゃうもんね


そんな正当な抵抗を雌豹は許さなかった。

後ろから首に腕を掛けて抱き着いてくる


「な、何をする!

 俺はお前のボディなんかに屈しないぞ!」


「今日逃がす訳にはいかないのよ!

 パパもママも居ないんだから!」


「それがどうしたって言うんだ...!

 ...ハッ!

 ま、まさか俺に乱暴する気ね!」


鞄も放して両腕で抵抗しているのに凄い力だ。

本気で締め落としに来ているようだ


「ほ、ホントに死んじゃうよ!」


「今日に、今日に!

 ハルとの仲が発展しなかったらアタシの気が収まらないのよ!」


「話を聞いて!」


恐ろしい幼馴染の勝手な妄執が俺の制止の声を遮断するのか、

傍から見ればイチャイチャでしかない死闘は

遂に俺......

ではなく美咲に軍配が上がり始める。


「大人しく、しろッ!」


柔道でも習っていたのかという、

ダイナミックな放り投げられ方をしてマネキンのように

吹っ飛ばされた俺は彼女のベッドにバウンドした。


そうして逃げる隙も無く、

瞬時に馬乗りになられた。


「お、お前なにを――」


「こうなったら仕方ない...!」


そして

美咲はせっかく着替えたお洋服の上を脱ぎ始めようとしていた。


それを見た刹那、

俺は今日ここで花を散らされるという貞操な危機感が!

咲き乱れた椿が地に落ちるイメージ映像が脳内に広がりながら生まれた!


ああ、無情なり。


こんな形で俺の純情は奪われてしまうのね......


涙がハラリと落ちるように

視線がドロッと地に向いた。

目の前のことは見たくないと、

大の字になってされるがままを許すポーズに......


勝利を確認したか、かつてやんちゃでありながらも可憐であった幼馴染であった女が

高笑いをして獣の如く俺の服を取っ払おうとした


その時だった!



「ただいま~」


「「!?」」」


こ、この声は


美咲のお母さんだ!


「きゃああアアッッ!!」


それが分かると俺は有らん限りの力を振り絞って

フルパワーハスキーボイスを放った。


襲われる者の最後の抵抗、

乙女のように高音で上げたはずの叫びは

カスッカスの裏声となって助けを求めた。


不気味な奇声にすぐさま


「い、今の声なに!? 美咲いるんでしょ~!?」


幼馴染の母の近付いて来る足音を聞いて

すぐさま俺を襲う者は

ずっと勉強だけしてました、

と言わんばかりの正座で勉強机に戻った。


そこで俺は辛くも野獣を退けて

貞操を守ったことに安心して

眠りにつくのであった......



ガチャ


「......何で、ハル君がうちにいるの?」


「あ、お邪魔してま~す」


咄嗟に起きて

満面の作り笑いで救世主に挨拶をした。

閲覧ありがとうございました。

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