家庭教師Xの前編
Xのケンシン(思いつき
「ねぇ、答えて」
グイっと身を乗り出して迫って来る美咲に、
胸元を見ている場合ではない緊張感を感じ取って瞼を閉ざす。
その瞼を強引に両手で開けられる
「目を逸らさずに」
「こ、怖いよ」
両目をかっぴらかさせる両腕をこちらも両腕で掴んで押し戻した。
ここで力負けしてたら男が廃るってもんだ
......というか本当に負けなくて良かった。
「落ち着けよ、まったくもう...」
じっとりした目つきで見られながら
今一度あぐらを組みなおして
謝るように下を向く。
さて、どう答えたものか
素直な事を言えば今よりは朗らかな表情で花山といることは事実だ。
だがしかし
そんなことを正直に言った日には、
あの女の臭いがプンプンする!
だのどうだの言われて、包丁でも取り出されそうだ。
ここは、
彼女にも貴女にも私が取る態度は全く以て同じ様なものですよ?
というのを全面的に押し出して示さなければ。
その考えの元、俺はそれとなく出まかせを発することにした
思考時間2秒足らずにして考えをまとめて顔を上げると毎秒、
顔のシワが険しくなっているように
みるみるうちに怖い表情になる美咲に俺は言った
「いや~...? アイツとも同じような感じだよ...?」
段々と目を逸らしながら。
言い終えて気付いたが
絶望的に自分が嘘が下手なことが分かった
当然そんな本人がもう反省し始めている虚言に
獣のように神経が研ぎ澄まされている幼馴染に通じるはずもなく、
「嘘でしょ?」
「うっ...」
冷たいナイフを突き出すかのような一言が飛んだ。
実際に刺されたかのような声が出てしまっている。
「う、嘘じゃないよぉ?」
何とか誤魔化した。
ただそれは刹那をやり過ごす言い訳でしかない
次の追求で俺は打ち倒されてしまうかのような覚悟を腹に決め始めた。
......なんで彼女でもない女に殺されかけているんだろうか、俺
「だいたいさぁ...今日まで学校で会いに行かなかったけど
ハルは平然と過ごしてたよね?」
ギクッとばかりに体が反応する。
身体が正直で良いことなんて、あんまりない
おっしゃる通りでございます、と
遂に折れて肯定出来たらどれだけ楽か......
しかし、嘘は始めてしまったならば突き通さずして一利なし。
切ってしまった火ぶたは元には戻せず、
落としてしまったお盆の水が返ることもない。
ならば、
ここは退けぬ勝負と知って
この山崎 治雄、
推して参りましょう
偽りの言の葉を!
「いや、実はお前が会いに来てくれなくて体調がブフッ!」
ああっと、危ない!
自分で作った嘘の出来があまりにも酷くて起きる現象、
吹き出しが起こってしまった!
しかし、
「ゲホッゴホッ! 今も肺を悪くしてるんだ...」
ここでペテン師山崎!
吹き出しを咳き込みに変えて見せた!
これは素晴らしい演技に違いない!!
「さっきまで何ともなさそうだったけど?」
「グフッ!」
だが残忍な雌豹・米田 美咲は華麗な言い逃れをも
その尖った指摘で捕らえてくる!
さあ、一体どうなってしまうんだ...!
(後編への丸投げ
なんかでは、ないです。)
閲覧ありがとうございました。




