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家庭教師編・9

「昔の癖でついついノックを忘れてたんだよ」


幼馴染だからこそ出来る釈明で何とか部屋に入れて貰った。


子供の頃は俺とほとんど変わらない男の子の様な部屋であったのが

すっかり変わっていたように思う。


花山の部屋は比較対象にしづらいので今どきの女子の部屋は

分からないが、

なんとなく大人っぽい落ち着きのある色や装飾に包まれている。


そうして部屋を見渡すのも終わり、

二人で勉強をやっていく時間の始まりなのだが......


美咲は勝手に黙々とやり始めてしまっている。


「え~と、今それはどこを――」


「分からなくなったら聞くから」


ぶしつけにそう返されて沈黙タイムが始まってしまった。


花山とは勝手が違ってギャアギャア言いながらやっていたのが馬鹿みたいだ。

まるで、幼稚園児の先生から今まさに高校生の家庭教師をしている気持ちだ


考えてみれば付きっきりでやっている方がおかしかったのかもしれない。

なんだかんだ言って俺も花山を甘やかしていた可能性もある......


となるとアイツには人に世話をさせる能力があるのでないかと思えてきた。

使用人の奴らがお嬢様に甘々になるの頷ける


そんなことをポケーッと考えていると


「ハルも勉強したら?」


と鋭いご指摘を頂いてしまった。

目つきも鋭い


「そ、そうだな...」


自分も教材を取り出してお互い向かい合って勉強をする


それが何となく落ち着かない空気を作り出す。

本来学生が言う勉強会なるものは最終的にただ遊びに発展するような、

言ってみれば集まって遊ぶための口実に過ぎない。


そのため真剣に互いが対面しながらも黙って勉強なんて出来る訳が無い


それも今に居心地の悪さに家庭教師である俺から


「ゲームでもしないか?」


とか言い出しそうになっている。


実際おバカに教えるならやる気もやりがいもあるが、

自力で出来る生徒相手には自主性の尊重から質問等があるまでは

出来ることなど限られているに違いない。


俺は勉強をするなら一人で、と決めている。


そもそも友達が多い訳でもにない俺に

遊び相手を前にして真面目なことをやるという意志が沸いてこない。


チラチラと美咲を見るがお構いなくガシガシ進めている


それを見ると

すごいなぁ

と、他人事で茫然と見てしまう

そしてその視線に気付いて睨まれる。


その流れをずっとさっきから繰り返して

俺が彼女の邪魔をしているラインまで来ている様に思う。


そこまできて俺は

もうさっさとお暇する方が美咲のタメになるんじゃないか、と

帰宅の選択肢が頭をよぎった時だった。


「ねぇ」


ちょっと怒った感じで呼ばれた

貧乏揺すりしているのを指摘されるような感じで。


「ん?」


ゆっくりと美咲の顔を見つめる

やはり少し険しい表情だ。


「あの女と居る時もそんなつまんなそうな顔してんの?」


「......え?」


やる気のない雰囲気を出していることを注意されると思って

不意を突かれた。


「そんなこと...ないよね?」



何か浮気を問い詰められているような空気が突如発生したことに


もう数秒早く帰る選択をしておけば......


と感じる治雄くんであった。


閲覧ありがとうございました。

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