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家庭教師編・8

一体、なんだというんだ?


いつも言いたいことは長くてもお構いなしに口頭で言ってきたアイツが

しおらしく手紙を寄越してくるなんて......


まさか...!


遂にアレを実行移してしまったというのか、

もしそうだとしたら俺は...


そんな勝手に緊張感を高めていた俺の内心に反して

手紙の内容は短く素っ気ないものだった。


【学校が終わったらすぐ、うちに来て】


とのことだそうだ。


...いや、それくらいなら口で言えよ

と思いながら教室に向かった。


その日も美咲との接触は、

当然花山とも無かったが

やたら見かけたような気がした。


前までは影も形も無かったというのに...


何か監視されているような視線を感じて振り返ると

美咲の後ろ姿が見えた。


逃げるように駆けていくのを見ると、

どうやら見られている気がするのも間違いじゃないようだ。


そうして学校が終わると花山にトイレに行くから待っていろ、

と言われたのを気にせず無視して

美咲の家に駆けこんでやった。


散々背後に回られては癪なので、

先に美咲を出迎えてやろう

という算段だ。


にもかかわらず美咲の家のインターフォンを押して返ってきた声は

本人だった。


「は、入って良いよ」


息の切れたような声を聞くに先回りされないように大急ぎで

その先回りをされたことに気付く。


あの女め......


自分より一枚上手であったことに変な対抗意識を燃やしながら

久しぶりに幼馴染の家に入った。


「お邪魔しま~す」


考えてみれば女子の家に上がり込むなんて久方振りに思う。

美咲の家の匂いもまるで変わってないように感じた


小綺麗な玄関からすぐ見える階段の先にアイツの部屋がある。


昔は遠慮も知らずにドカドカと靴を脱いだらそのまま

階段を駆け上っていたことが懐かしい。


......というかよく考えたら女子の家には

つい先週に花山の屋敷に上がっていたことを

急に思い出した。


屋敷規模だけに家と思えなかったというか、

花山が女子に思えなかったというか...


そんなどうでもいい事が頭を占めていても

体は当時の動作が染みついているように

いつの間にか美咲の部屋の前にいた。


我に返ってみると何やら中でドタバタと音がしてせわしない。


女の子に対するマナーと礼節を考えれば、

普通はゆっくりと待ってあげるところだが


「入るぞ」


と言いながらノーノックでそのドアを開け放った。

ついつい幼き頃の悪戯心が出てしまった、

イタズラや意地悪をされていたのはどちらかというと俺の方なのだが


そしてそんな復讐込みの衝動でやってしまった事というのは大体後悔に繋がるものであって、

目の前の景色が幼馴染とは言え見目麗しい女子高生の生着替え中の光景とあっては


「ふぅ...さあ来やが――」


覚悟を決めた宣告の前に恒例の物投げを喰らうのは避けられぬ運命であったのだ。

2回目であればそれがよく分かる。



今度は気は失わずとも柵がなければ1階まで真っ逆さまになって

命を失うところだった。


閲覧ありがとうございました。

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