家庭教師編・7
そうして花山を教える木曜・金曜はまさかの中学の復習で終わってしまった。
休日にも宿題を言い渡して今さっき泣き付かれたところだ
「休日にも勉強など嫌だ~!」
とか言って足にしがみ付いてくるのを、
「じゃあ、美咲に負けて良いんだな?」
と現実を突きつけて中学の学習プリントで埋め尽くされたテーブルを
そのままにして自宅に帰った。
もはや自分だって休日に勉強をやる羽目になっているのだ、
週4で自分以外のペースに合わせるのでは
自分が疎かになる。
珍しくだらけずに自宅での学習を始めて思うのは
週明けの美咲との予定。
結局水曜の放課後からアイツと顔を合わせることが無かった。
同じ学年でも会おうとしなければ
クラスが違うというだけで、
パタリと見掛けなくなることがよく分かった。
1回くらいはいつに待ち合わせるのか詳しく決めるために会いたかったのだが......
冷静になった今だからこそ思うが、
やはり彼女は彼女なりに俺の事を想っているのかもしれない
そう考えると、何か複雑な思いがする。
またモヤモヤとする雑念を払って、
目の前の勉強に中3の冬の時を越えた集中力を向けようとしていた。
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そして月曜になった。
日曜の朝ごろから思ってしまうのが週始まりへの嫌気だが、
実際その朝になると覚悟は決まるもので
むしろ、やっと始まりやがるのか
と言った開き直る根性が出てくる。
それに今週の土日は遊んでばかりいたわけでもないので憂鬱な感じは無かった。
そうしていつも通り、花山の迎えから1日が始まった。
結局日傘を持つのが面倒くさかったのか、
まさに執事っぽい爺さんを伴っていたが
その人はスーツ姿なのに、
当然持っている日傘はお嬢様にかざさなければならないので
見ていて居たたまれなかった。
白髪の高齢の人が直射日光を受けて息を切らしている方が、
よっぽどお化け屋敷より冷や冷やするものなのだと初めて知った。
当のご主人の花山はケロッとしているから
やはり金持ちは恐ろしい。
校門まで着くと花山は老人の苦労など知らず
「トイレ!」
と言って駆けて行った。
俺はとりあえずご老人に会釈をすると
その人は深々とお辞儀をしてヨロヨロと帰って行った。
帰る途中で倒れたりしないだろうなぁ......?
そう思って背中を見送ってから校舎に歩き出した。
玄関まで着いて下駄箱に歩み寄ると横に並ぶ人が現れた
先に上履きを取る事を譲ろうとしたが
その人は前に出ない。
変に思って見てみると
美咲だった。
「はい、これ」
そうして目が合うやいなや何かを手渡されて先に
彼女は行ってしまった。
貰ったのは手紙だった
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