家庭教師編・3
「ええ、つまり
だからここの由美子は何故広志を殺めてしまったかというのは――」
「当たり前よ、これは広志が隠れて浮気をしていたのよ!」
「そんなことどこにも書いてないだろ、泥棒猫め!」
それからというもの取り敢えず国語の勉強が始まったが、
美咲は国語の恋愛をモチーフにした小説にやたら私情を挟んでくるし
それに花山が噛みついて
まるで指導になりやしない。
「ここで由美子が広志を殺してしまったのは不慮の事故で――」
「そんなわけない! この物語おかしくない?」
「おかしいのはお前の頭だぞ、メス猫」
ああ、もう
「頼む美咲、物語にもケチを付けるようなら帰ってもらうぞ」
「何よ、意地でもアタシは帰らない。
同じ年ごろの男女がいるとこを放っておけるわけないじゃない」
「な、なに!?
ハルは襲ってくることがあるのか!?」
美咲よ、お前も同じ歳だろ
保護者気分でも目立ち過ぎだ。
首を突っ込んでくるな......
「ふぅ...分かった、じゃあこうしよう」
適当に紙を千切って二人に渡す。
「これにお前らの都合の良い時間と教えて欲しい教科を書け、
そして書いたら俺に見せろ
スケジュールはこっちで決める」
その説明が言い切る前に二人とも高速で書き始めた。
話聞いとるんか、コイツら......
そしてほぼ同時に二人が差し出してきた答えは
「ほぼ同じじゃねえか!」
どちらもコンビニ店員に求めるかのような24時間体制を求めて来た。
コンビニ店員の方がまだ休めているかもしれない
「おい、美咲なんだ深夜の1時から3時とかいうド迷惑な時間帯は」
「そ、そんなの言わせないでよ...」
「ふん、発情猫め」
当然そんな下品な生物を見下すように言う花山も
「お前は7時から24時ってなんだ?
赤ちゃんの世話する時間帯じゃねえんだぞ?」
「赤ん坊は夜泣きをする。
それに比べれば――」
「比較対象が赤子でお前は恥ずかしくないのかって話だよ!」
身を乗り出して俺自らツッコミを入れる羽目になった。
美咲は顔を赤らめてるし、
花山は未だに首を傾げ続けている。
「はぁ~......決めた。
平日の月・火と木・金、お前らどっちが良いかジャンケンでも良いから
決めろ」
「「水曜と土日は?」」
「週4で許せよ...それぞれからしたら週2だろうが、
俺と一対一でなくて良いなら週4にしても良いが?」
その提案に流石に二人とも押し黙った。
そして二人の目線が合わさって火花を散らして拳を握る
「おいおい暴力じゃなくてジャンケンで――」
「「最初はグー! ジャンケン!!」」
力入りすぎだろ...また殴り合うのかと
それにしても息ぴったり
「「グー!」」
その初手あいこから地獄のあいこ続きが始まった。
軽く10回を超せば20回にも届きつつあった、
もはやここまで来ると双子を疑い始めた。
当然本人たちが一番...
「き、貴様! なぜ私に合わせるのだ! 気味が悪いぞ!!」
「そ、それはこっちのセリフよ!」
鳥肌に冷や汗と、
お化け屋敷に行ったくらいのホラーを前に涼むと
埒が明かないのであみだくじで決めさせた。
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