家庭教師編・2
「じゃあ、お前は理系ってことだな」
「ん?」
こちらの分析にあちらさんは首を傾げる。
「なんだそれは?」
「そんなことも知らんのか...
文系と理系って知らないか?」
「あ、ああっ!
も、もちろんだとも!」
見栄張りやがって...
「だからまあ、理科も教えないからな」
「え」
「理系だから要らないだろ? 俺の教えは」
今になって少し納得した顔を表に出してるのが見え見えだ。
せめて隠せっての...
「そ、そうだな!」
「うん...
そう考えると、後は文系教科だけだな」
「そうだな!」
同じことしか言ってない。
焦るとすぐこれだ、
美咲に今度心理バトルでも持ち掛けられたら、絶対負けるぞコイツ
「お前苦手だろ?
国語とか社会とか」
「う~む、私に死角は無いがな」
死角の比率に負けつつあるだろ、お前の視野は
「ということで、まあ
俺も文系だし
丁度いいだろ」
話が付くと立ち上がって伸びをする。
荷物を確認して持って歩き去る
「お、おいハルよ!
どこへ行く?」
やはり呼び止められたか
「テストまでは時間が無いんだ、もう今日から始めるぞ
だから俺は今手元に無い教材を家に取りに行ってくる。
その間、用意しとけよ?」
その言葉に花山は目を輝かせた。
「やる気になってくれているのだな!?」
ガキっぽく喜びやがって...
気恥しくなって顔を背ける
「ま、まあそんなとこだ
やるからにはやり切るのが俺だからな...
待ってる間遊んでたりするなよ?
いいな?」
それを聞くと後ろで口答えしそうな声を出しそうだったので
キッと睨みつけると花山は押し黙った。
そうして俺は真面目に家に教材を取りに行った
訳がなく
猛ダッシュで学校に向かった。
当然、早退してしまったことについての釈明をしに行くためだ!
もう息を切らして着いた時には5時間目が終わっていたが、
何とかなった。
しかしここで一件落着といかないのが俺の因果、
「あの女にまた何かされたの?」
美咲ちゃんが俺を取っ掴まえて
ほぼ壁ドン状態事情聴取を受けている。
身長差がほぼ無いので廊下でイチャイチャしてるカップルみたいだから壮絶にやめて欲しい。
それも男が女にしてるならまだしも、
その逆だから!
「アタシに言ってごらん?」
息が掛かるようなその近さにドキドキより
周りから見られていることの恥ずかしさが冷や汗をドッと溢れさせる。
「な、何でもないからお願いだからもう帰らせ――」
「言えないようなこと...
されちゃったの?」
ああ、なんでこんな積極的になってしまったんだこの子は!
壁ギリギリまで追いつめられる鼠の気分だ、
もちろん彼女は猫、いやヒョウかもしれない。
「か、家庭教師を頼まれただけだよ...」
「...ふ~ん」
事の真相を話して納得してもらったであろうその後も謎の
壁ドン拘束時間が3分くらい続き、
俺に新たなトラウマが出来る日となってしまった。
それに
「ということで宜しくね?
花山...さん!」
美咲を花山の屋敷に連れて行く羽目になってしまった。
「どうしてコイツを連れて来たのだハルよッッ!!」
ああ、もう無茶苦茶。
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