家庭教始
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「んで、何を教えて欲しいんだ」
「控えめに言って全部だな」
「どこを控えたんだよ」
まあ、得意なことから探す方が早そうなくらいだしな
苦手ばかりだろうし...
腕を組み、足を組んで柔らかさソファーに上体を倒すと
質問を開始する。
「ええ、じゃあまず得意な教科を教えてもらおうか
花山さんよォ」
「うーむ、まず大前提に英語だな」
「当然ってとこだな、そこは教えんぞ」
そこが大げさに言えば唯一のハーフだかクオーターだかの強みなのだから、
英語にまで掛けている時間はない。
「し、しかし少しくらい時間を掛けても――」
「駄目だ、美咲に勝ちたくないのか?
アイツは知力でもお前に引けを取らんぞ?」
「なんと!?」
とは言え花山と比べて程度だ。
俺からすればドングリの背比べ並みに
今のままでも下手したら差は無いと...
幼馴染としての見解から考える。
「ふん...流石は私と同じ男を見込むだけあって、
少しは出来るようだな」
傍から見れば笑っちゃう小競り合いだがね
「それで、他にはないのか?」
続けての問いに
もう悩まし気に考え込み始めた。
馬鹿の一つ覚えでは埒が明かないというのに
「あっ、そう言えば数学も得意だぞ!」
「え?」
それは意外だった。
俺は文系だから教えづらい科目として難しいポイントだったので助かる
「ほう、数学か
なんで得意と言い切れるんだ?」
「ん?
それは東洋人よりも我々欧米人の方が算数能力で劣っているのだから
その分我々の血筋が数学で
ハルたち東洋人を上回っているのは確定的に明らかであろう?」
かなり自信たっぷりに言い切ったが、
結構失礼な上に冷静に考えたら
その理論はおかしい
「さ、算数まではよしんば分かるとして
数学で何でお前の種族が優位になるんだよ?
その分、の理屈が分からん」
「簡単なことであろう?
算数で負けているなら、数学で勝っているはずだ!」
コイツが言いたいのは昔に
インドや中国、また日本が算盤を頻繁に使ってきた歴史があることによって
簡単な計算式の暗算能力は一括りに
東洋人は欧米人を上回る計算能力があると一時期希望的観測の元に
話題になった時期があった。
そのことを花山は覚えていて悔しかったのか、
それとも何かしらの根拠があって数学の領域まで行けば我々のルーツの方が優秀である
そう言いたいのだろう。
というか
「お前はそっちの血筋に誇りを持ってるんだな」
「うむ!」
ならば開き直ってやるとしよう
「じゃあ、お前は祖先というか爺さん婆さんどっちの故郷でも良いから
そっちの方に帰って結婚相手でも探せば良いじゃないか。
さあ、国にお帰り?」
「ま、待て! ハルよ!
そんなに卑屈になることはないぞ!」
「なってねえよ」
お嬢様は立ち上がって力説する。
口角泡を飛ばさないで欲しい
「何もそんなことで私は伴侶などは決めない!
どころか愛によって決まる!
そう、そうあるべきなのだ!!
だからハルをちゃんと愛しておるから、心配しなくてよいぞ?」
ニッコニコで諭すように言う。
「そりゃ、この国の女とくらいじゃなきゃお前の身長は目立つと思うぜ?」
「うるさいわ!!」
案外ご令嬢は身長を、気にになされておいでのようだ。
プププ...
「ああ、ごめんごめんって
じゃあ数学は良いんだな? 教えなくても」
「え? あ、ああ
それで良い...」
引っ掛かる考え方だが、
本人が大丈夫なら仕事を増やす必要はないだろう。
俺も数学は敬遠したいところだ
そうしてこの時、自身も数学から逃げて後で痛い目に合うとは
当時の俺くんは無論、知る由もない。
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