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可能性

(雪上の滑りで)遅くなりました

そうして残すは後3種目、

花山が全て美咲を越さなければ勝利はない、という厳しいものになってきた。


花山は美咲に対し、1勝1分3敗...


後の3勝負を1つでも落とせば敗北の道しか残されていない。

くだらないとは言ったが、

アイツもアイツなりにそれだけボール投げにしろ

他の種目にしても全力で挑んでいた。


だからこその落ち込みなのかもしれない


だがしかしここで一戦、

たった一戦でも負けてしまえばそこで勝負は終わってしまう


それを俺は見たくなかった。



そう思って居ても立っても居られなくなって掛けた、

俺からの一声はアイツに届いているか...?


負けるにしろ全力の勝負を見せてくれ......!



そんな熱くなる俺を差し置いてアイツはやっとマットから起きても、

バアさんみたいな猫背で長座体前屈に向かった。

あの腰がどこまで伸びるのか...



勝敗は決まったも同然なのか


美咲は早々に早い者勝ち制の並びで一番先頭を行く気合を見せ、


「ハアァ!!」


体を曲げることに要るのか分からないほどの声量を出して、

51.5㎝という好記録も出した。


美咲は美咲で

確か俺の記憶では小さい頃、新体操をやっていた。

体を柔らかいのを自慢して俺に絡みついてきていたような...

あの頃から意識されていたのだろうか


それにしても、そんな記憶は過去の昔。

今になっても維持されているその柔軟さは天性か


さあ、どうするんだ花山...?


まだ放心状態に見える。

やはり情熱は消え去ってしまったのか、

...恥ずかしいようだが、俺への愛はそんなものだったのか?



...ならば何も言うまい


俺は遂に花山の姿を見届けず、

背を向けた......


そうして聞こえてきた記録は



「す、すごい! 55㎝です!」


ハッとなって振り返った。


それは美咲も同じだった


それもそうだろう、

51という記録も簡単に出るものではない記録を

あっさり超えやがった...!


見ればまだアイツのおでこは床に付いている。

抜け殻のような意識が体を柔らかくしたのか、

期せずして花山が勝利した


ボーッとしてゆっくりと立ち上がったアイツに闘志は感じられない

まぐれだったのか...?


それでもいくら体が小さいとは言え、

人の身体の柔らかさは鍛えるか天性でもなきゃ

ああはならない。


まさか...

美咲の方が鍛えた結果で、

花山の方が先天的な才能の結果なのか!?


だとしたら......


美咲を見るとその怒りが、

闘争心が、

具現化して見えるようだった。


虚ろな小さな女を敵視するには

十分すぎるほどのやる気を滾らせて、

美咲は次の種目にすっ飛んでいった。



その次の場所は...


3本のラインが平行に伸びるステップ場、


種目は反復横跳びだ!



...もしかしたら



アイツはまだ本当に勝てるかもしれない。


閲覧ありがとうございました。

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