三連体育祭編・43
自分もほんの少しばかり目を丸くしたが、
嬉しい申し出に既に自分の心は決まっていた。
ただ、チームメイトの意見は一致していないようだ
「だ、誰がお前みたいな......!」
「でも、強さは折り紙付きじゃない?」
「強ければ誰だっていいのか!?
はあ、これだからイケメンやらムキムキな男であれば
ホイホイついていって乗り換える阿婆擦れさんは......」
「なんですってぇ!!」
不必要な男子の一言はいつも女子との喜劇を開演してくれる。
さっきまであれだけ仲良く抱き合っていたチームが
バラバラになりかけ、提案者の男も困っていると
彼女の声が響いたのである。
「静かにッ!!」
そのよく通る声は無関係な近くのギャラリーすらピシャリと
黙らせるほどの厳かなものであった。
さすが俺の、いや皆の委員長だ
「よく聞いて。
私は彼の提案を承諾しようと思う。
ハル君は凄く頑張ってくれた。
何度も止めようとも思った。
でもその背中には私たちを守ろうとする覚悟があった。
そしてその覚悟が必要な程の苛烈な攻撃を耐えきってくれた。
これ以上ハル君を想うなら、それに代わるだけの人を入れなくては
犠牲と覚悟を無駄にすることになる......分かってくれる?」
「で、でもよォ......信頼できるのか?」
「それは彼がこれからの活躍で示してくれるでしょう、ね?」
清楚なる圧を新たに仲間になる男と共に感じた。
ちょっと強気な笑みというか、邪悪さはないけれど
有無を言わさぬ強かな美しき女性の顔だった。
それに仲間になった男はゆっくりと頷いて応えた
「さあ、自己紹介してくれるかな?
私たちの新たなチームメイトさん?」
「剛力 聡だ。 よろしく頼む」
すぐさま有希さんは拍手をした。
それに連なる様に一人、また一人と剛力を向か入れる者が現れた。
拍手の波は周りを巻き込み、両チームの健闘を称える
温かい空間を作り出した。
未だ納得いかない者は複雑な面持ちで形だけ拍手しているが、
そんな彼らも分からせられるだろう。
新たに加わった凄まじい力を持った男の必要性を
「この戦いが終わったら......」
「ああ、分かっている。
話そう......君を狙う者たちの正体を」
こうして有希さんの鶴の一声で実力者であり、同時に
大事な黒幕に関する証言者を手に入れることが出来たのだった。
その裏で、ある会合が行われていた。
「ふっふっふ、奴が裏切りましたか......」
「奴は我ら四天王の中でも最強......終わったな!」
如何にもな眼鏡男と剽軽な男が不敵な笑みを浮かべた。
「待ちなさい、それは単純な筋力だけの話であって
アタクシ等の力があれば別にどうってことは――」
「そうだ、それに......」
続くはJKと呼ぶにはあまりも妖艶な女と、
その語る言葉を継いだ男こそが
「次は俺自らが出る。
剛力を相手ではお前たちも骨が折れよう」
黒幕の男、そのものだった。
「ようやくあなたが始動しますか......」
「バレーじゃ、エースのくせしてワイらに任せきりなんだものー
ボスってのはいい身分ですわ」
「アタクシ達だってエースなのよ?
皆で仲良く全ての競技に出る必要などないわ......それに、
ボスに相応しい力を見せてくれるのでしょう?」
投げかけられる煽りも熱を帯びた視線もまるで意に介さないといった、
余裕の風格で男はこう言い残して表舞台へと向かうのであった。
「やはり粛清は俺一人で行う。 お前たちは次戦下がっていろ」




