三連体育祭編・37
結局バレーボール部門では一年世代3位という結果に。
バレーでの世代代表戦は様子見に回るしかない。
都合のいいことにバレーは最初にやってくれるので、
もしその後の2部門でも代表に選ばれるチームがいれば、
その中のエースくらいは分析できるかもしれない
スポーツが別物なので必ずしも直結はしないだろうが、
どうにしろ全部門で自分の体力の配分を考えながらそうした化け物相手に
全て出場することがなくなったことは、情けなくもホッとしたところである。
「3位なんて良かったじゃねえか! うちなんて4位だぜぇ?」
「文句言うもんじゃないよ、兄貴。
ベスト4の上にバレーボールの部では戦ってないんだし、
僕たちは得意のサッカーでこれから自分のクラスに
更に貢献することだけを考えなきゃ!
僕のクラスはベスト8だから挽回するために頑張るよ」
「そんなこと言って気合十分なのはいいけどよォ、
ちゃんとボール回して貰えるんかよ? 兄として心配だぁな」
「の、ノーコメント......」
バレーでは見学組だった二人はまだ元気な様子だ。
結果に肩を落とすというより、とにかく疲労でだんまりしながら
兄弟の会話をラジオの様に聞いて帰った。
そして気付けばベッドに倒れ込み、睡魔が
プロ格闘家の如くチョークスリーパーを仕掛けてくる。
抵抗する気持ちが起きないどころか気持ちよさすら感じて、
身を委ねようとしたところで
「ちょっと、兄~?
まさかそのくっさーいまま寝るんじゃないでしょうねぇ?」
「臭くなん、か......嗅いでみろ......や」
「風呂に連行してやる......って、あれ? 女の匂いしない?」
「!!」
漢の部屋に問答無用で入ってきた甲斐甲斐しい妹を振り切って、
風呂場に駆け込んだ。
まさか美咲の匂いが付着してたなんてバレたら何を言われるか
それにヤバいのが昔馴染みの美咲であることだ。
おそらく妹は米田家の匂いを知っているはず、あのまま
ボケーっとしていたら発覚するところだった
急いで衣服を洗濯機に突っ込み、体を徹底的に洗うことで
危険な匂いと決別できた。
おかげで妙な行動に対する疑惑はより一層深まったが
ひと悶着ありながらも夜はぐっすり寝られて、2日目を
迎えることができた。
そして水曜の3日目、休みの木曜日と続き
最後に金曜日が学年代表戦となる。
ちなみに木曜は休みと言ってもイベントが一旦休止するだけで、
学校つまり勉強はあるのだ。
そんな日くらい休校にしてもらいたいものである
まあ、今日と明日一年代表になれなければ休みの木曜のクラスの空気は
さぞお通夜ムードになることだろう。
そして金曜の当日までには見物サイドとして楽しもうと悲しい一致団結を
して、このクラスマッチが終わることとなろう
「そうはさせるか......!」
いつもより少し早く家を出て、そう自分に言い聞かせると
学校へと小走りで向かった。
今日はドッジボール、ハッキリ言って三種目の中で
一番自信がないと言ってもいい
何故そんな自信がないことを自信満々に言うかというと、
あまりにもシュミレーションが難しいためだ。
あれほどイレギュラーが起こりやすいものもない。
なれば如何にキビキビ動けるか、状況判断かできるか等の
根本的な部分が物を言う。
故に朝からいつも通りの時間、いつも通りの過ごし方では
リラックスしたルーティンのまま本番を迎えてしまう
変に気負うのも良くないが、今のできることと言ったら
これくらいしかなかった。
そうして今まで体験したことのない教室一番乗りを
ほんのり楽しみに階段を駆け上がると、
見覚えのある背恰好が見えた。
しかも、その人は自分のクラスに入っていく
こんな早い時間にいつも来ているのだろうか、それとも
自分と同じように......
走ってはいけない廊下をここぞとばかりにわざとらしく全速力で
駆けて、謎の影を追うのであった




