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三連体育祭編・36

心配そうに有希さんも姿を現した。

彼女を心配させてしまうとは俺もまだまだだ


「ハル君大丈夫? 結構強く頭を打ったみたいだけど」


「一番ダメージを受けたのは頭より......まあ、何ともないっすよ!」


「本当かぁ? 私が確かめてしんぜよう~」


こういう時に限ってダル絡みをしてくるKYお嬢様。

打ったのは後頭部なのに可愛らしいそのおててで額を触ってくる。

このままあちこちベタベタ触られて終いに布団の中もまさぐられると

非常にまずいが、今は大人しくされるがままになるしかない。

下手に抵抗してまた取っ組み合えばすぐに気づかれてしまう。

俺の動きが何かを隠しながらであることを


奴はこういう時やたら勘がいいのだ。


「うむ、脈も取ろう」


「え」


「む、どうした? 早く腕を出しなさいっ」


「もう、薫のお医者さんごっこに付き合わせちゃ悪いでしょ?

 しばらく安静にさせてあげなきゃ」


そう諭されて尚も強引に片腕の脈を測られた。

医療従事者でもないのに気づかれただろうか。

やけに早い脈拍くらいおバカな女子高生にも分かるものなのか、

怪訝そうな表情にみるみるなっていく


エリーの無駄に美しい瞳をとても見つめ返すことができない。

こんなことをしては余計に怪しまれるのに

奴の歌舞伎役者の様な目力に、やましい気持ちを抱えた自分の

心が負けて視線を逸らしたくなってしまう


「ほらっ、薫」


「待ってくれ! ハルはこのままだと高血圧でヤバいかもしれない!」


「異性に手も腕もしっかり掴まれたら誰だってドキドキするものよ、さあ」


「まだ! まだハルの傍にいたいのにー!」


どうやら今回は勘の悪いガキ(のような見た目の同級生)でいてくれたらしい。

それともおちゃらけているだけでもう少しで何か突き止められていただろうか、

やはり底の見えない女である。


そんな都合の悪いミニレディより褒め称えたいのは有希さんだ。

保護者の様に駄々っ子を優しく引いて帰ろうとしてくれている我らが委員長。

事情を悟っているかのようなファインプレイに止めどない感謝が心で溢れる。

それでも彼女たちが完全に去って保健室のドアが閉まるまでが、闘いだ


一瞬の油断もせず、エリーのしつこいバイバイに延々と応えてやって

見送りは完了した。

そしてゆっくりとクソでかため息を吐き出すのだった


「だはぁー......危ねえ」


「あ、アタシも危なかった......はぁはあ」


「暑い思いさせちまったか? 体温高いのかな、俺」


「むしろそれが良かったというか......」


ボソボソとまだあのままでいたかった、なんてふざけたことを呟いている。

このまま近くにいるのはヤバそうだ。

俺がいた位置の残り香を嗅ぎ始めた時点で脱出を決意した


恍惚として幸せそうに放心状態な彼女を一人置いて、そろーりと

無事保健室を後にするのだった......



その数分後、保健室の先生はトイレでの激闘から

お帰りになられたそうな......


「あぁ、痛かったぁ......って寝てた子が女の子になってる!?

 君は誰ぇ!? 怪我なの、病気なの!?」


「これは......恋の病ですぅ」


「重症だこりゃ、うちじゃ手に負えません!」

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