表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
243/274

三連体育祭編・35

思えばよく拾ってくれたものだ。

着弾地点は言わずもがな、低い位置であったことは確かだ。

サッカーでは胸でも頭でも上手くボールは弾ませられる。

ましてや顔だって衝撃の吸収率が良すぎるが、位置の高さから

ギリギリ何とかなるかもしれない。


しかし、アソコでは色んな意味で助かりようがない。

棒高跳びでいう所の背面飛びの様な形になったことで、

仲間の必死のサポートもあり、ボールは守られたという。

まあ、自分のボールは守るどころか差し出して

突き出す体勢で奴の一撃を食い止めることになったが


弱点への強烈な一撃に加え、後頭部強打では古い気絶癖が

叩き起こされるというもの。

その後のことは有希さん......なら最高だったのだが、

エリーの安定しない膝枕の上で聞かされた


美咲は茫然自失といった感じで途中で交代になったこと、

ミアはあまりの滑稽さに抱腹絶倒で交代になったこと、

俺の意思を継ぐ者達がしっかりと激戦ラリーを制して

しっかりと場を盛り上げて勝ったこと。

それを聞くと一つ息を吐いて、俺はまたパタリと倒れた



次に目を覚ました時には知らない天井、

という訳でもない保健室に運ばれたことに気付いた。

氷水の詰まった枕で後頭部の痛みはそこそこに治まっていた


倒れたとあっては周りを心配させてしまっただろうが、

それよりいっそ球に玉が当たったことを笑い飛ばしてくれる方が

俺の犠牲の供養になるというもの。

一刻も早く元気な姿を皆に見せなくては......


ベッドから降りようとするとカーテンレールを払って

意外な人物が来訪した。


「治雄!」


「ちょ、ちょっと」


現れて途端に抱き着いてきたのは、加害者ご本人

美咲であった。


「大丈夫? どう、割れたりしてない?」


「こらっ! 触診しようとすな!

 玉とは言っても卵とは訳違うから大丈夫だって」


これだから男の身体をよく知らないレディは困る。

更に聞いて驚かされるのは、なんでも思い描いていた新婚生活の第一歩を

自らの手で破壊してしまったと思い、ついさっきまで心あらずだったらしい


一歩目に必要ってことはショットガンマリッジに持ち込もうと

画策してるってことか......?


「もう本当に心配したんだから! あんな無理して......」


「えーっと、まあ心配させて悪かったよ」


ガッチリ密着してくる彼女の背中を撫でて落ち着かせる羽目に、

思えば美咲も狙って球で玉を打とうとした訳ではない。

そう分かっていても複雑なもので、なだめつつも

特にベッドの上で抱き合っていては心中穏やかではない


そうした時に限ってタイミング悪く、


「失礼します......と、先生いらっしゃらないのかな」


「そんなことより! ハルー! どこだぁ!?

 三位の表彰式が終わったから見舞いに来たぞォー!!」


「薫、保健室では静かに......!」


「お、明らかにいそうなカーテンレールに囲われたベットが!」


道理で抱き着いてくるコイツがズカズカ入ってきたかと思えば、

保健室の先生はトイレか何か知らんが離籍中だったようだ。

それはつまり一瞬でも時間稼ぎをしてくれる人物が

不在であり、ギリギリカーテンが隠してくれているが

あと数秒で二人に今の光景を見られてしまうことを意味する。


エリーはともかく、有希さんに見られては

彼女とのラブストーリー可能性が完全に潰えることになる。

それだけは避けなくては!


「おい、美咲」


「は、はいっ」


有無を言わさないために、強く抱き寄せて耳元で指示を出そうとすると

驚くほど従順になった。


「今からお前を隠す、静かにじっとしてろ......いいな?」


黙って頷かせるとすぐさま布団を掛けて彼女を隠した。

時期がもう少しでも早ければ、二人では酷く暑かっただろう。

エリーがうちを来訪、というか襲来してきた時を思い出す


「はぁ! ここに隠れていたか!」


「逃げも隠れもしてねえーっての」


バッとカーテンが開け放たれた時には隠ぺいは既に済んでいる。

指示通り大人しくしてくれているが鼻息が荒いような......


とにかく何としてでもここを切り抜けなければ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ