表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
242/274

三連体育祭編・34

「なんで、入らないのよッ!!」


美咲の苛立ち交じりのアタックをまた防いだ。

ただ、それを受けきったのもまた俺ではない。

これから攻撃するのが、


「この俺だぁ!!」


大して高くもないジャンプだったが、しっかりとボールを叩き

運良くがら空きスペースに入れ込んだ。

これでやっと今大会2点目。

自分は守りに徹していたし、攻撃はからっきしなので、

ラッキーポイントとしてスコアは10-3。

ラストセットは15点先取なのでゴールはあと少しだ


「ど、どうして私の攻撃が......ハル以外にも防がれんのよ!?」


「ふっふっふ、知りたいか?」


「くっ......」


こちらは勝利を確信しての勝ち確タイムを取ったので

ゆっくりと聞かせてやる時間ができた。


「俺が開幕からお前の攻撃を受け続けた。

 その間チームの皆には観察に徹して貰っていた。

 そして第二セットの終盤は完全に見切る仕上げに入っていたんだ。

 それがプランWait and seeってとこだ」


「......道理であっさり最後の粘りがない、どころか

 まるで私が攻撃するのを待ち構えているかのようだと思ってみたら、

 わざとだったっていうの?」


「そちらさんのチームの攻撃は美咲一辺倒だったからな。

 よく知らないが、お前たちを負かしたチームもそれに気付いて

 対策を組まれたんじゃないか?」


驚きつつも腑に落ちたというような顔だ。

それもつかの間、すぐにいつもの勝気な感じに戻った


「勝負も決まった訳じゃないのにベラベラと手の内を明かして......」


「......はっ!」


「明らかな負けフラグを立派に設立していると思わない訳?」


「む、無駄な精神攻撃だな!

 そんなことを言っている暇があったら、バカの一つ覚えみたいな作戦は

 この際変えることだな」


などと煽ってみた訳だが、確かにこういった展開では勝ち誇った側が

バカみたいな熱血主人公やらに気合か奇跡の覚醒か何かで流れを覆されがちだ。

しかし、そんなものは所詮少年漫画ワールドでの話で

コメディにもシリアスにも満ちたこの世界では通用しない。


加えてこれから作戦を変えなければならない様な迷いある者には

できない芸当でもある。

俺たちの勝利は揺らぐことはない


背を向けて仲間たちに最後の檄を飛ばしに行こうとすると、


「私は、私を曲げない!!」


なんか尤もらしいことを語り出した。


「ここまで来れたのも私を信じ、幾度も活躍の好機を私に預けてくれた

 仲間たちのおかげでもある! こんなところでその芯を曲げたら、

 それは本当の私たちのチームワークではなくなるのよッ!」


「この大一番で、限界でも超えてみせる気か? そう上手くいくかな?」


何故ノリノリで悪役のセリフなんて吐いてしまっているんだ、自分は。

良くない、とても良くない流れだ。


「皆が信じた私を、私の力を信じる! 絶対、

 絶対にアンタなんかに屈しないんだから!」


「あっ......」


最後の最後で奴はやらかした。

そのセリフのおかげで盛大なフラグ争いの勝者は彼女に決まった。

こうして、姫騎士が如く幼馴染は俺の手によって敗れ去ったのだった



というシナリオになるかと思われたが、現実は死闘を擁する事となった。

スコアは17-17、そう延長戦に突入してしまった。

怒涛の追い上げを見せた美咲のチームはもちろん、

こちらもリードこそ許さずとも後一歩で追いつかれること三点連続。


誰の顔にも疲労の色と額に大量の汗が浮かんでいた。

次で、次で決めなくては......


互いに思うことは全く同じところであった。


「し、しぶといわね......」


「そ、そっちのチームもな......」


全く互角の相手が現れた時、それは好敵手との素晴らしい戦いとなるか

血で血を洗う泥仕合になるか、はまさに二極化する。

二回戦が前者であるなら、最終戦は後者そのものだ


会場の空気は冷めてはいないものの、

どこまでこの疲労困憊の同期達を見なければならないんだ

という風にも感じられる。

エンターテイナ―を自称する俺として、これは頂けない。

かと言ってここまできて劇的に負けてやることも

勝ってやれそうな気もしない


この局面で物を言うのが精神力だ。

それならこっちの方が上だ、と思った矢先


「あ、ごめん!」


我がチームのアンダーサーブとは思えない変則球を百発百中で

打ち込んできた影の功労者に、遂に陰りが出てきていた。

これで17-18。

初めてこのセットでリードを許し、絶体絶命。


サーブを務めるのはここに来て、まさかの美咲。

奴の一撃で終わってはまた俺は敗北者になるだけだ


いや、この際俺は負け犬でいい。

うちのチームが勝ってくれるなら、それでいい!


「これで、終わりよッ!!」


渾身の一撃が飛んできた。

既にアイコンタクトで俺が何がなんでも死守することは伝わっている。

こちらの最終ラインぎりぎりに飛んでいく。

背中から倒れる勢いで決死のジャンプを試みた


「体のどこかに当たってくれー!!」



次回『そこだけには当たって欲しくなかった』をお送りします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ