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三連体育祭編・30

「はぁはぁ、つ、強い......!」


「これが身体能力の暴力だというのか......!」


案の定、俺たちは苦戦していた。

やはり準決勝ともなると簡単なチーム等どこにもいない。

目の前の相手チームはもちろん、もう一つの組の奮戦も歓声の度合いからして

ありありと分かる。

むしろ、この試合を取り囲む観客の数も歓声の大きさも

隣と比較して少ないまである。

それくらい力の差は歴然と見られている


それも当然、もう既に


「1セット取られて気付けば第二セットもリードを許してる!

 エース! このままじゃストレート負けだ!」


「言われなくたって、分かってるさ......なんとかしなきゃ」


準決勝からルールが変わって三セット形式に変わる

がもちろんのこと先に二セット取られるような展開なら、

そのまま取られたチームは負けだ。

ラッキーで上がってきた様なクラスはここで二連勝という

輝かしい戦績から圧倒的点差で捻じ伏せられ、

むしろ二回戦くらいで敗退したクラスの方が明るい顔をしている

というまでに奈落の底に落とされる。


自分たちはまさにそうした感じで見られ、どこからか

公開処刑の様だと揶揄する声まで聞こえてきそうだ。

正直隣の試合をよそ見する余裕はないが、もう一つの準決勝の試合の方が

確実に盛り上がっているので野次馬さんたちはそちらをご覧になって頂きたい。

こっちを見ないでくれ......


「た、タイムを要求する!」


ベスト4にのみ許される権利、本格的な試合の様なタイムを所望した。

要求は通され、息も絶え絶え誰もがへたり込みながら水分補給を終えて

最後の抵抗策を何とか捻出をしようと声が飛び交った


「あいつ等全員プロか何かだと思った方がいい!

 攻めて駄目ならせめて相手がミスするまで、

 あんまりこちらから攻めない方がいいんじゃないか!?」


「そんな弱気になったらダメだよ!

 攻撃は最大の防御って言うし、相手だって所詮ただの高校生で――」


それぞれの個性がせめぎ合う、本音どうしの素晴らしい討論だ。

だが今は追い詰められていることもあって、冷静さも欠いてもいれば

互いの意見を聞き入れる余裕もない様に思える。

ここで最後の一仕事だ


「お前たち......」


「な、なんだよ何か妙案でも思い付いたのか?」


「好きなようにやれ、悔いが残らないように懸命に。

 そして相手の攻撃は気にしなくていい」


「でもそれじゃあ、いつかはやられて――」


心配性な女子チームメイトの話を遮るように雄々しく

悠然と立ち上がった。


「奴らの攻撃は俺が食い止める」


誰もがハッとした顔でこちらを見つめている。

如何にこうした追い詰められた状況で、誰を頼るのか

誰の言うことを信じていればいいのか

ようやく理解してくれたようだ。

そう、エースに任せればいい


逆転の起点も最後の砦も面倒な責任も引き受けてくれる、

エースという存在に。


「今こそ見せてやるぞ......!

 現役高校女子バレー選手の鬼しごきに耐えた修行の成果を」


皆にも何より自分にも言い聞かせるように心の帯を締める。


思い出される。

あの時の痛みが、あの時の叫びが......

短いようで長い、かと見せかけてやはり大して長くもない回想に

我が意識は突入した

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