三連体育祭編・28
さあ、二戦目が始まろうとする中
何やら揉めている様な声が聞こえてきたと思ったら、
まさかのうちのチームだった。
「おい!俺たちの作戦を流出させてる奴がいるらしいぞ!」
「ちょっと男子~!」
「口の軽い女子の方が疑わしいぞ!」
その場についてすぐに察した。
なるほど、これが二戦目が上手くいかない訳か
流言作戦に打って出てきたことは瞬時に分かった。
それに最も男女が入り乱れるバレーボールチームでは効果は覿面だ。
今回の三競技の中で一番女子との身体能力の差が控えめであり、
バレーボールに女子が集中するのはどこのクラスも当然だ。
故に女子ばかり見るな、と釘を刺されていたわけで
もちろん遠目からしっかり分析させてもらったわけだが......
身体的特徴以外にもクラスによって個性があることは分かった。
きっぱりバレーボールは女子だけで組んでいるところも特別
珍しいわけでもなかった。
そちらの方が連携や団結に支障が出ないと踏んだのか、
男女両者の陣営の仲が良くないのかは推測の域を出ない。
どうにしろドッジボール・サッカーという競技では力を発揮しずらい
という理由以外にも女子が敬遠したい激しめの内容であるのは確かだ
むしろサッカーを女子染めにして男子相手の防御策を講じている
なんて、チームがいるというふざけた噂を聞いたが冗談であろう。
とりあえずどこも男女混合になることが当たり前で、
程よく男子を入り混ぜてるチームが今のところ勝ち上がっているように見える
それに......先ほど我々が戦ったチームは同性同士で仲が悪かったのだから
もはや救いようがない。
にしてもなぜ別々の競技にしなかったのだろうか
などと他チームを今更心配している余裕は全く以て無い。
合流するなり、なけなしのリーダーシップで場を宥めるしかない
「おいおい、どうしたよ......揉め事か?」
「ああ、でももう済んだんだ。犯人は女子だって分かったから」
「ちょっと横暴にして推理力の無いザコザコ男子~」
「んだとォ!?」
うちは仲が良いんだか悪いんだか、この試合直前で煽り合っているとは
まるで緊張感がない。
深刻な感じはしないが、ここはガツンと真実を伝えねば
「おい、お前たち聞いてくれ」
「犯人はやっぱりお口ゆるゆる女子だよなぁ!?
百合百合しいったらありゃしないカシマシ娘だよなぁ!?」
「ちょっと頭ゆるゆる男子、マジで黙って話聞けし」
「ああ、そうだぞゆるゆり君。 とは言っても俺が今から言うのは
とても簡単なことだ。
それこそ犯人なんているかも分からないし、
いない可能性を俺今から示唆したい」
誰もが途端に頭上にクエスチョンマークを浮かべる中、
俺はキッパリとキメ顔で言ってやった。
「俺たち、まともな作戦なんて考えてこなかったじゃないか」
「「!!」」
「漏洩する作戦がそもそもない、違うか?」
この一言だけで些細な諍いが一笑に付すことになり、
共に肩をたたき合い、戦場へと皆明るい雰囲気で向かうことが出来た。
こんなことで乱されるとは......と俺だけ内心不安が膨張したのは秘密




