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三連体育祭編・24

「あら、そんなに急いでどこに?」


「......クラス思いの俺なりの敵情視察さ」


「ちょっーと、待ちなさい!」


言い残して影の様に去ろうとも首根っこを掴まれては

呻き止まることしかできない。

そう、強引な奴の名は


「ったく、なんだよ美咲!」


「忠告しにきてあげたってのに逃げることないでしょ!」


「あーん?忠告?

 いつもの他の女子とは数メートル、アタシとは数センチの距離にいなさい

 っていう聞くも聞かれるも恥ずかしい常套句かぁ?」


「それはまた別に心配しなくても明日言ってあげるわよ」


こんな調子だから例の生配信で歪曲して関係を知られている俺と美咲は

廊下等で話しているだけで、通りすがりの者共にクスクスと笑われるのだ。

それをコイツは満更でもない様子でいるのだから性質が悪い。

ということでエリーとの特訓が忙しい以外にも言いつけと反対に

幼馴染との距離を取ったのだが、会えない時間が愛を育てる

とかいう面倒なパッシブ発動をすっかり忘れていたおかげで

美咲からの圧はより一層強さを増したのである


そんなこんなで素直に話を聞けるはずもないのだが、

今回の彼女はほんのり真剣風味のようだ。


「千夏からも聞いてるでしょ? 有り体に言えば黒幕の」


「......ああ! 吉沢さんやエリーから聞いた男の話だろ?

 まさか美咲から吉沢さんの名前が出るとは思わなかったから

 ピンと来なかったよ......案外、仲良くなってたんだな」


「う、うっさいわね!」


知らないところであの騒がしい夏から交友関係が続いていたことに

にんまりしてやると、いっちょ前に恥ずかしがり始めた。

コイツの羞恥心は一体どうなってるんだろうか......?

異性より同性との関係の進展の方を照れるなんて


「と、とにかく! 分かってるなら改めて話すまでもないけど、

 アンタが狙われてる可能性もあるんだから、このお祭り騒ぎに浮かれて

 油断しないように気を付けなさいよね!」


そう言うと絡んできた最初と立場が打って変わって

逆に逃げられてしまった。

そんな所に愛嬌を感じつつも、冷静に考えればうちの幼馴染は

そもそも異性同性問わず友人が多いことに気付いた。

自分が関わるとエラーが起きるだけで元々は俺とは

似ても似つかぬ陽の差す側の、それも中心人物なのだ


それでも彼女に言わせれば恋敵?であろう存在とも

仲良くしようとは彼女なりに成長しているのかもしれない。

そう考えると久しぶりに自分がちっぽけな存在であることを

思い出すことが出来た


最近主に異性とばかり接触が多い生活だが、

自分から同性の友人でもたまには美咲を見習って

今回のイベントの力でも借りて作るか、

そう伸びでもして前向きに歩き出そうとした矢先




「そのニヤついた間抜け面を凍りつかせてやるよ」


横を通り過ぎた男にそう囁かれた。

ビクッと後ろを振り向いたが、既に人ごみの中に消えていた


奴は、奴こそがまさか......



不穏な噂がただの杞憂で終わることはないことが分かった瞬間、

背筋が凍りつくような思いをするのだった。

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