三連体育祭編・23
「ついにやってまいりました!我らがアオハルの華!
三連体育祭の中間イベント!クラスマッチ!!」
その声と共に多くの生徒の歓声が響き渡る。
マラソンまではある程度は厳かな雰囲気で始まった三連体育祭も、
クラスマッチから一変して熱くポップなものへと様変わりする。
最終イベントの運動会までにチームの団結、各個人の意欲を
かき立てるための演出であるとも考えられる。
そのため学生主体のイベントになっていくため、
かなりクラスマッチは自由さと奔放さの堺があやふやな
カオスな空気が展開されるのだと糸田の兄は語っていた
「俺はあん時、一年だからなーんにも知らなかったがよォ
あれは今思えば最終イベントよりもお祭り騒ぎだったかもなぁ
なんせ、まだあの段階じゃ総合優勝なんて分からねえもの」
そう、マラソンというただひたむきに走る舞台で
スタミナと走力がものを言う誤魔化しのきかない戦いに対し、
クラスマッチのスポーツは思わぬ試合展開になることも少なくない。
いくら各個人の競技のスペシャリストがいても、
クラスとしての団結力や気持ちの方向性が定まっていなくては
全力を発揮することはできない。
故にここで更なる絆の深まりを達成するクラスもある一方で、
ここでギクシャクすることで最終イベントに影響が出ることもある。
故にこのクラスマッチは今後の明暗を分ける分岐点といっても
過言ではないのだ。
「くぅ~......こんな狭い体育館で騒がれては耳に来るなぁ」
「これでも他校の倍以上はある広さなんだよ、引きこもりお嬢様」
「む、私の耳は繊細だからキンキン!とするのだ。
決してこういったParty Peopleな空間に慣れていない訳ではないぞ」
「お前のハーフ設定まだ息してたんだな」
クオーターだ、と相変わらず憤慨するエリーをいさめつつ、
会場はアゲアゲな状態のまま第一競技が始まることになった。
先ほど語った通り、部活重視で尚且つマンモス校である我等が体育館は
そこらの学校のものと比較して広さは実に2倍強ある。
おかげでバレー共にドッジボールは広めのコートを取っても四分割でき、
効率的に試合を消化していくことが出来る。
加えて天井から仕切りも垂れ下がっていて、
暴投されたりで飛んでくる球はしっかりシャットアウト出来ている
狭いところを二分割したおかげで隣の試合のボールが乱入する、
なんていうよく聞く事例も無く、快適に各コートで戦いに集中できるのだ。
ただ、歓声は当然遮断はできないのでエリーの様な日陰者でなくても
ライブ会場といい勝負できるくらいに喧しいのは確かだ
「この感じじゃ、間近で見るのは難しいから二階の観覧席から見るしかないか」
「ほう、他チームの実戦分析も欠かさないとは流石ハルよなぁ?」
「お、おう! 任せとけ」
無論、スタイルの良い子の試合を近くで見たいだけなんだが
というのが本音だ。
それを一瞬見透かされたかのような冷たい視線を避け、
逃げるようにして人ごみをすり抜けて二階を目指した。
すると階段付近でクールなライバルキャラの様に腕を組み、待っていたとばかりに
クールでも何でもない奴に絡まれるのである




