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三連体育祭編・22

そしてクラスマッチ前日。


「はぁ、はぁ......し、仕上がったぞ!」


「いーや、これで最後の仕上げだ......

 いくぞ、ハル!」


エリーと数メートルの距離を隔て、俺はゴールネットの前で直立し

三つのボールが置かれ対峙している。

思えば今回は球技大会とも言えるような内容だ。

俺の水泳案が選ばれなかったばかりに、

この三つのボールの取り扱いに困らされたのだ......

水泳であれば二つの夢の詰まったボールを眺めているだけで楽しめたのに


「!! 雑念を抱いてる場合かぁ!!」


まず一つ目のサッカーボールが奴の怒りを込めて蹴り放たれる。

こっちに真っ直ぐにすっ飛んでくる


「弾くまでもねえ!」


突き出した両手はガッチリとサッカーボールを掴んだ。

相も変わらずあの矮躯からなんというキック力、

脚力に感心してボールを下げた瞬間エリーが投擲モーションに

入っているのに気づき咄嗟に構える


「次はこいつを受けてみろ!」


体全体を使った捻りから力いっぱいの投球が次に襲い掛かる。

ドッジボールには弾きの選択はない。

今度こそより真正面で、胸の前で


「受け止めるのみ!」


先ほどよりも少し弱く、しかし確実に全身に衝撃を受け

球をしっかりと抱きとめた。

そして最後は、


「ふんっ!」


エリーがバレーボールを空高く蹴り上げる。

あんなこと御法度なのだが、アイツにしかできない芸当故に許される

長身選手のアタックを超えた渾身の一撃だ


「ラストシュート!!」


落下軌道に入ったボールに合わせるように飛び上がり、

空でオーバーヘッドで蹴り込む。

公式戦では恐れ多くて使えない、修行用のみの禁断のバレーショットだ


素人の滅茶苦茶な軌道のシュートを抑えられてこそバレー部の一撃を凌げる。

語ると長くなる美咲や美咲の部活メイトのアタックを受け続け、修行の先で得た

答えがまさにこれであり、コイツさえ対応できればバレー対決でトップの

実力の女子バレー部入りのチームと渡り合えるはずだ


「届けぇぇ!!」


コースはポストギリギリでゴールに突き刺さらんとする最恐の

軌道を描き、まさにグラウンドに叩きつけられてネットを揺らそうか

という勢いで飛んでいく。

その接地しそうになる数センチに自分の手が滑り込み、そのまま

弾んでゴールとなった。


「やり遂げたな!ハル!!」


倒れ込んでいる俺にアイツはドタドタと駆けてくる。

ベストはゴールもさせず宙高くに弾ませることだったが、

バレーボールにおいては如何に接地させないかを競うものなのだから

ここは合格としたい。

この短期間で仕上げられる限界に至ったと感じる。

ああ、しみじみと思い返される......

エリーと走った日々、そしてあまりにも他の女子といる時間が

長いばかりに怒れる女帝の美咲が現れ、

女子バレー部を率いて地獄のようなしごきを受けた。

他にも糸田兄弟とのサッカー修行、クラスの皆で訓練したドッジボール。

まだ語り尽くせぬ思い出がまざまざと......


「浸りすぎっー!!」


「ぶへっ!!」


ツッコミにしてはやりすぎなド突きを食らって現実に戻った俺。

そう、エースを任された俺は今回三種全ての競技において

縁の下の力持ち、というポジションを選んだ。


ドッジボールでは誰よりも前に出てボールを受け止め、

バレーボールでは誰よりも献身的にボールを拾い、

サッカーでは誰よりも泥だらけでゴールを死守する。


誰よりも輝くエースより、影の実力者でありたい。


そんな願いを込めた修行の成果は、

そして、忍び寄る悪の正体が嘘か誠か

もうすぐ、明らかになる

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