立ち幅跳び・前編
「さあ! 次は立ち幅跳びだ、ちゃんと準備体操をするんだぞ!」
そう言われて始まったのが靴に入る砂との闘い、立ち幅跳びだ。
これが終わった時の靴下の汚さと砂がずっと靴に入ってる感覚を思い出すだけで
「ゾゾッ!」
「お、なんだハルよ。 その掛け声は流行りものか? ゾゾッ!」
「違うに決まってるでしょ、このパツキン幼女...
正しくは、靴に砂が入ってる感覚をハルは想像したのよ...
ねぇ、ハル~?」
なぜ女子の列からはみ出して俺のそばに二人でいるのか...
なぜ花山は人の真似をして苛立たせるのが上手いのか...!
なぜ美咲は俺の心境が分かるのか!
この3つの謎の方が俺をゾッとさせるわ
そうして始まった砂場での練習。
さて、どいつもこいつも飽きずよく飛び続けるものだ...
所詮、体育係なる素人が測る記録など信憑性が薄いだろうに...
実際中学で俺はその素人が毎回言う記録を信じて
自信満々に飛んだ記録が散々であった記憶があるからである。
だからこんな練習で筋力も体力も消費するなど無意味!
そして!
何より砂が入るのが嫌!!
俺が練習なるものをしないのはそのためだ...
では本番まで退屈であるため致し方ない、
女子の方でも見るか...断じて覗きではない
視察だ。
お、吉沢さんが凄すぎる
「お~い、覗きのプロ山崎~
記録測るの手伝えよ~、お前体育係だろ~?」
さて何か遠くで聞こえるのを無視して視察を続けていると
まず美咲の番が回ってきた。
まだ本番ではないのに練習に本気を掛けてしまう情熱お馬鹿さんか...
とくと見せて貰おうではないか
と...もうこれ以上見るまでもなく全力であることが分かる
砂場のジャンプ線からどんだけ離れて助走を取っているんだ......
ああ、凄い走りだ
飛んだ!
うわあ~...凄い土煙...ないわぁ~、絶対靴に砂入ってるやつだわぁ~...
そうしてこちらの靴が美咲の靴と代わって
砂を受けたような不快感に足踏みをしていると、
花山の番が来た。
しかし...
あれ、アイツなんか後ろの女子に話しかけてるぞ...?
あっ!
後ろに回った!
アイツサボってやがる!!
「おい、サボり山崎。
いい加減手伝え」
そうしてクラスの奴が怒って言うものだから仕方なく手伝う。
人が飛ぶ度に砂煙が舞ってこちらに来る。
もうこの仕事辞めたい
そうして全身が砂っぽくなって煙に包まれる中、
女子の本番が始まるのが見えた。
お、まさかのトップから美咲だ
一体あのバネの有りそうな体でどこまで飛ぶのか...
そしてサボっていた花山の実力とは...
どれほどのものか見せて貰おうじゃないか...!
「本番も俺達男子の記録はお前が測ってくれ、山崎」
...それで良いのかお前たち......
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