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三連体育祭編・5

帰ったその日の夜に美咲から連絡が久々に来た。

内容を見るより先に履歴を思わずチェックした。


随分前にした返信は既読スルーで終わっている。

俺が親からスマホ所持の許可を貰ったのが高校に入った最近で、

使い慣れし始めたのもついこの頃という今どきの若者らしからぬところだが

故に長らく気付かなかった。

他の知人に比べて幼馴染は素っ気ないということだ


やはり一対一のやり取りの時は恥ずかしいのか未だに素直じゃないらしく、

まるで脈なし男の俺がSNS上でつるんでるかのようなトーク履歴は

なんだかモヤっとする。

そして今回の文脈もラブコール等無い事務的なものだ


【さっきの件、亜美にお願いしたから調整は二人でしといて】


その文の下には麦野の連絡先がある。

知らぬ仲ではないが本人に聞いたわけでもない連絡先に

こちらから連絡を入れるのは変に意識してしまう。

俺を美咲関係で敵視しているアイツのことだ、

即ブロックも有り得ると恐る恐る軽い挨拶と

空いてる時間を聞くと爆速で返信が返ってきた。


【直接会うことは少ないしこっちで話すことになるかもねー

 よろしく~弱虫ハルちゃん!】


続けて送られてきたスタンプは明らかにこちらを煽るようなものだった。

まだ夏祭りで恥ずかしい呼び名を赤の他人にバラされたのを根に持っているのかと

思ったが、その後普通にミアとハルちゃんと呼び合いながら何気に会話は弾んだ。

それこそ本題を忘れるほどに......


昔話にも華が咲いて気付けば就寝が遅くなるわ、

結局予定を組むのを忘れて寝落ちしてしまった。

おかげで起こしに来た弟に自室の部屋の侵入を許し、

あまつさえ点けっぱなしのスマホのトーク履歴を見られて

まーた浮気してるだのどうだの騒がれて、逃げる様に家を飛び出した


母親は愉快そうだったが、妹はゴミを見るような目つきが

汚物を見る目にグレードアップというべきかイメージダウンしてしまった。

おまけにスマホの充電は無いので登校途中にミアに聞くこともできない。

トレーナー失格である


「で! 今日私に完膚なきまでにやられる引き立て役は来るのか!?」


「あ、ああ! 今日じゃなくて明日な!」


初めてエリーに対して悪いを嘘ついてしまった気がする。

そういったことの真意はいつもの勘が働かず素直に信じるので、

罪の意識は増すばかりである


直接会って交渉することで罪滅ぼしも考えたが、やっぱり

気恥ずかしさというものが出てくる。

あれだけ仲良く昨夜は話したというのに、それが直接でなく

電子のやり取りであると猶更というか......

なるほど、スマホ等を通じての交流と対比して直接の会話などが

リアルでは、と称される理由が何となく理解できるようになった


携帯を持つ前もどちらも現実での出来事・リアルではないかと

時代遅れなことを言っていた気がするが、SNS上だけで気が大きくなる

人間なんかの心理も今なら分かる気がする。

むしろ自分はそういう人間だからこそトーク履歴だけで浮気を

指摘されるような調子乗りが発動してしまうらしい。

自分がある程度理性を以て振舞える高校生になってから

こういった物を持てたのは、まだ良かったと思う


母がどれだけ考えていたかは分からないが助けられた。

もっと早くに手に入れていたら今頃下手に関係を悪くした人間が

出来ていたかもしれない......

そういった人間関係に立ち回りをちゃんとした弟と妹は俺より早く

スマホを与えられているのが嫌な証拠である。


そんなこんなで何もやらずじまいで終わり、その日は無難に走り込みをさせ

何なら役に立たないだろうが自分も並走することでけじめをつけた。

無論、エリーの方が断然余裕で今日のメニューは終えた。

仕上げの歩道橋ダッシュでこちらはもう汗だくだというのに、

あちらさんの額に遠目には光るものが一つとしてない


汗を拭う風は涼しさを伴ってきた。

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