夏休み編・72(終)
今年の夏が終わるギリギリで夏編を終わらせられてよかった......かな?
彼女は昔からこの祭りの運営代々携わってきた家系の長女であり、
神輿周りにはその姿が必ずあると言っていい。
そのため祭りを象徴する格好をしていても何ら不思議ではないし、
露出の多い姿を凝視することも何も悪いことではない。
美咲と楽しんだ後の仕事真っ最中のはずだが......はて、何故こんな所に
「なんだぁ、この頭も交友関係も軽そうな女は?」
「え、なにこの人形みたいに可愛いのに嫌な子」
「ああ、紹介するよ。
コイツはミアっていう俺の美咲と同じ幼なじみで......
コイツは教室での隣人だ。
いや、だったと言う方が正しいか」
ポンッと小さな頭に乗っけた手を紹介した小娘に払われると
何とも言えない顔の亜美が腕を組んだ。
「ふーん、あくまでただの女友達を主張するんだ......」
「ん? 変わった名前だがこのギャルっぽいのも私と同じ異国の血が?」
「あ、そうだ! その名前でもう呼ぶなって言ったよね!?」
「そう怒るなよ......最初に自己紹介でコイツが自分の名前を
反対に言ったのが始まりだな。
あれって結局わざとだったのか?」
そう聞くとみるみるうちに顔を赤くしてそっぽを向いてしまった。
一種の内輪乗りの定番である。
本気でまだ子供で逆に覚えていた可能性もあるし、
奇をてらった自己紹介をしただけかもしれないし、
真相は彼女が語らない限り闇の中だ
「ほーん......で、そのミーちゃんが何か御用?」
「む、むかつくおチビちゃんやね......って、話が逸れたけど
それで美咲のこと知らないの?」
「ここにさっきからいるけど見てないな。
ま、見つけたら教えてやるさ ミーちゃんよ」
「くっ......覚えとけよ、弱虫ハルちゃん!」
捨て台詞が本当に昔から変わらないことについ吹き出す。
そのまま亜美はどこぞへと走っていってしまった
「そんなに可笑しかったか?」
「だって子供の頃去り際に必ず言ってたセリフだぜ?
それを今あんなに立派に成長しても言ってたら笑っちゃうだろ」
「り、立派ってどこを見とるんだ、きしゃまぁ!」
「どこ見てるんだ貴様は、こっちのセリフだよ」
そんなムッツリ令嬢と祭りを眺めながら、
あれやこれやと話していたり、偶然出会う久しぶりの顔触れと世間話やら
エリーを彼女と間違われてひと悶着ありながら、人の波も落ち着きを見せ始めた。
ようやく思い出深い一日も終わりが近づいてきていることを告げている
「よーし、ほんじゃそろそろ帰るか」
「えぇ~、まだ居たいぞよ~」
「また来年な」
「!!」
まだ八月に来年の話など鬼が大笑いするだろうが、
来年にまた誘いが確定したことに喜ぶエリーの様は鬼でなくとも笑うことだろう
賑やかさに後ろ髪を引かれながら離れ、いつもの帰り道を歩いていく。
夜空を上にして誰かと帰るのは何気に久しぶりの体験かもしれない
「小学生の時はご近所さんの家で夏祭りあとにも集まって、
楽しく遊んだのをこうして帰っていると思い出すな」
「今はやってないのか?」
「まあ、子供の繋がりあってこその集まりで今じゃ学校は違うし......
あの時は夜遅くまで友達と遊べる滅多にない機会でさ、
夏祭りよりそっちが楽しみだったっけ......」
ふーん、と聞いていたエリーが腕を組んで何かを考えこんだかと
思うと急に弾ける笑顔に大きな声で突拍子もないことを提案してきた。
「そうだッ! それをうちでやろう!!」
「うるさいですね.....まあ、悪くないんじゃないか?
あの島でのメンバーでも呼んでさ」
「うむ! 今から!」
「今からッ!?」
逸る暴れん坊令嬢をなんとか宥め、それも来年の楽しみということにした。
追加でまた来年の夏にも大型旅行に行こうなどと言うし、
たった一日で来年夏の予定の大半を埋められてしまった気がする。
こっちの都合も知らないでエリーは家の前で別れるまで満面の笑みだった。
その輝きは星空にも負けていなかったので、この夏の日を思い出す度に
憎たらしいほど可憐な顔が浮かぶのだった
この夏を終わらせるのにおおよそ2~3年掛かった様です......遅筆が過ぎる




