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夏休み編・66

「いやー、ほんと凄かったね!!」


初見さんの大絶賛に地元組の俺と美咲は腕を組んで少し自慢げだ。

本当にこの祭りの手伝い等も子供の時にちょっとだけした程度なのだが、

自分の地元というだけで褒められると嬉しくなるのはなんなのだろうか


そうして悦に浸って屋台巡りを再開しようとすると、新たな人物もまた

颯爽と現れて今度は美咲の腕を引いた。


「ここにいた! なんで今日だけやたら連絡つかなったのよ、美咲!」


「あ、ご、ごめーん......別に無視してたとかじゃなくて忙しくて......」


「ははーん.....なるほどね

 そりゃそんなに気合い入ってる浴衣見て怒ったりはしないけどさ......」


ギロッとこっちを見たのは美咲の自称大親友、麦野亜美だ。

簡単にまとめるとコイツは美咲や俺の古い悪友を抜いたら、昔から

関わりのある女子だ

ただ、何かと俺に突っかかってくる厄介な存在だ。

ちなみに美咲大好きクラブみたいなのの中心人物はコイツではないか、と

すら自分は睨んでいる


何故かというと美咲のことが大好きで、

そして今思えばその美咲が俺を好きだったわけだから

敵の敵は味方、恋する人の恋する人は敵

ということで散々目の敵にされてきたためだ。

つまり最近その理由が分かったということ。

冷静に考えたら男として美咲が好きだから喰って掛かってくるのは理解できるが、

麦野は女である。 本気で美咲が好きなのだろうか


どうにしろ納得したから俺にも原因があったよ、ごめんね

とはならない。

何なら和解をしたいならあちらから詫びの一つでもない限り御免だ


そもそも好きな人の恋路は阻害するのではなく応援するのが、

恋人情というものであって......


「その気合入れてる理由がコイツってのが気に入らないだけ! ふん!」


そんな説得・説教が通じる相手じゃないのはこの通りだ。

ぶっちゃけると子供の頃男の子っぽかった美咲に比べて、

まだ麦野の方が見た目は可愛いなと子供心に思っていた。

今でこそ美咲と並んで遜色ない美しさがあることは認める。

だが、人間やはり外見より中身だとこの女が再認識させてくれる


「さ、行こっ そんな奴ほっといて」


「で、でもまだ約束の時間まであるし――」


「どうせ美咲の望み通り二人きりじゃないだし、いいじゃーん......それにさぁ」


今度はギロリと吉沢さんの顔を見ると、足先から嘗め回すように麦野は

彼女を見たし、俺も便乗して吉沢さんをじっとり見た。


「こんないけ好かないくらいイイ女と三人なんて美咲も疲れるでしょ?

 今は息抜きの夏祭りなんだし、あーしと英気を養おうって」


「別にナツは美咲ちゃんと彼を取り合ってるわけじゃ――」


「シャラップ!! そんな肌けた姿でよく言うよ、女狐ちゃんさぁ......

 にしてもホントにデッカ......噂には聞いてたけどあーしや美咲より――」


「分かったわよ! もう、じゃあね! 治雄に色目使ってもいいけど無駄よ!!」


去り際まで吉沢さんの胸を凝視する麦野と制する幼馴染は雑踏の中に消えた。

最後の一言は隣の彼女より俺に対しての釘差しであることは間違いないだろう。

親友には滅法弱い彼女が何故幼馴染には少しも弱みを見せてくれないのか


「そんなに大きいかな......どう思う?」


「え、それはそのぉ......」


その時の自分は大胆にも手を引いて屋台の話を強引に振る選択をした。

デリケートな質問に答えるよりか遥かに容易かったのである

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