表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
200/274

夏休み編・64

「お 邪 魔 虫 ~!!」


「そ、そんな怖い顔しないでよ~

 本当は弟たちもいるから一緒にいけないはずだったんだけど、

 今年は半世紀の50周年祭りなんだし、お友達と一緒に楽しんできなさいって

 パパとママが送り出してくれたの!」


「良かったじゃん、アハハ......ってイタイイタイ!」


「デレデレしたような顔になってたからついよ、つい」


万力で手を握られては情けない声も出る。

昔から力では腕相撲等で負け、背丈でも負けていた。

今だってギリギリ誤差みたいなもので背丈は勝っているが、

実の詰まり方を考えれば当然あっちのが上で筋肉量も負けているかも


「凄い人だかりだもんね、ちゃんと手を繋がないと」


そういった吉沢さんはあっさりと俺の左手をキープ。

怒りよりも美咲の顔はそのあまりにも自然な動作に

末恐ろしいものを見たといった感じ、

当然俺も驚いている、女の子によって肌触りはこうも違うのかと。

ハッキリ言って昔から繋ぎ慣れてる手より新鮮味があって尚且つ......


「ムキッ―!!」


絶対口から出す表現ではない怒り方でまた右手を粉砕されそうになる。

明らかに心の声を読んだかのようなタイミングに、

余計なことを考えるのを辞めた......



こうして始まった両手に華状態は人込みのおかげか

気恥ずかしさを和らげてくれていた。

周りを見ればこっちが恥ずかしくなるくらいベッタリのカップルもいれば、

昔から常連の老人から母親に抱かれている赤子まで老若男女が

押しかけているほどの大盛況だった


冗談ではなく本当に手を繋ぐことが有効手段な以上、

美咲も不満ありげながらもどこか手を握り返す度に顔が綻ぶ等

そこまで不機嫌ではなさそうだ。

吉沢さんに至っては左腕を完全に胸元にロックしてくるだけで

別段変わったことはない


とでも思っていないとこの感触に僕は飲み込まれるだろう。


でも仕方ない、この混雑ではどさくさに紛れて吉沢さんの魅力に充てられて

身体を押し付けようとする者がいないとも限らない。

うん、仕方ない


常識のないお嬢様の付き添いのつもりで、持ってきておいた上着がなければ

もっと凶悪な柔らかさが俺を襲っただろう。

その前に露出の多い女性に服を着せる紳士ムーブをした瞬間、

美咲に襲われているのだが


それにしてもやはり今回は栄えある50周年というだけあって

屋台の並びは多種多様である。

いつもはこんな豪華ではないとか、最近あれがなくなって残念だとか

そんな話をしてやるはずだったエリーは近くにいない。

こんな大混雑の中、アイツは......いや、二人は大丈夫だろうか


「うわ、いつものアレが始まるみたい今の内に寄らないと」


「お、そのようだな」


美咲の言うことは振り返って見なくとも音で気付いた。

アレとはそう、ここの祭り名物「疾走神輿」である。


「え、なになに? なんなの」


「アンタ最近越してきたの? この地元の人間なら知らないはずは......

 あ、分かった こいつそもそも人間じゃなくて悪魔よ。

 アタシ見たもの、漫画かなにかで。

 それも人の男をたぶらかす性悪のサキュバスとかそういう淫魔に違いな――」


「小さい子連れの世帯は早い時間にちょっと寄ってすぐ帰っていくから、

 若干遅めのこのイベントを知らなくても無理ないだろう。

 第一、そういう子たちが誤って飛び出しとかがない様に今くらいの

 時間帯に設定でもされてるんだろ、たぶん」


「そんな危ないものなの......?」


早口でまくし立てる幼馴染を遮って説明した通り、

祭りらしく派手で、それでいて危険な香りを漂わせる笛や太鼓の音色が

人の波をかき分けてその全貌が背後に現れ始めるのであった

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ