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競う二人

「ずいぶん遅かったね、ハル?」


どう考えてもこの先の展開が見え透いて怖い


「では...ハルの便意もスッキリしたところで...

 今度はスッキリではなく! ハッキリと! 決めて貰おうではないか...」


「な、なにをだ?」


「「どちらがハルの相手が相応しいか!」」


その揃った声が学校全体に響き渡ったと思うと

恥ずかしさを超越して...るような気がしたがやはりめっちゃ恥ずかしい


「じゃあ...質問からいいか?」


「「どうぞ!」」


息ぴったりじゃねぇか...


「まず、美咲」


「え、アタシ!? 今、アタシって言ったよね!?」


「まだお前が良いなんて言ってないだろ、この野良メス犬め!」


「まあまあ、落ち着け花山...」


危うくスクールファイトが始まるところだ


「なんで美咲は急に俺をそんな風な目で見てたんだ?」


「え...? 見ちゃ駄目だったの...?」


そう言うと口を押さえてオロオロと膝から崩れ落ちた

舞台女優か、お前は


「ふっ...お前の様な庶民ではハルのお眼鏡には叶わなかったぁ!!」


見下して罵るお前は、悪役令嬢か


「いや、そうではなくてだな...その~...コイツみたいに最初から

 飛ばして好意を分かりやすくぶつけてきてたとかそういう訳でもないから――」


「乙女心よ! 分からないの!?」


もう完全に悲劇のヒロイン気取りだ、美咲は


「ふっ...所詮は田舎娘、無様なもんだ...」


「お前は黙ってろって...」


すると美咲がスッと俺の前に立った

な、なんだ...?


「好意を示せって言うんなら...恥ずかしいけど」


そう言って俺の顔を両手でバチン! と挟んで、顔を近づけてくる!

おいおい、コイツマジかよ!?

乙女で顔も赤くしてるなら、こんなとこで...!


「公然の場でキスする馬鹿がいるかぁ!!」


気持ちを代弁してくれた花山は背が低いのを利用して腰を落としてちょうど目の前にある

美咲の腹に正拳突きを喰らわしたようだ

吹っ飛んだ美咲がちょっと可哀そうだが

倒れた後とんでもない形相で花山を見てる


負けじとやり返しそうだ


「やったわねぇ!!」



「ストップ!!」


すかさずボクシングのレフリーのように二人の間に割って入った


「もう、お前たちは駄目だなぁ!

 ここで二人とも失格にして良いくらいだ!!」


それを聞くと怯えて足元に二人がすり寄ってきた


「やだ~!」


「見捨てるなど婚約者として酷いぞハルよ~!!」


こいつ等は声のボリュームの加減も出来んのか...!

もう周りに人だかり出来てんだよ!!


「いいか!?

 そんなに優劣つけたいなら!

 今日の体育の体力テストで優秀だった方が勝者とする!!

 いいな!?」


二人はもう首を縦に振る速度を競ってやがる

そんなとこで体力の差が分かってたまるか...



かくしてパッと浮かんだ体育の時間にあった体力テストという適当な基準で

二人の女の本気の勝負が始まろうとしていた...!


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