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アイランド・サバイバル編・29

腕すら動かすことができない、矮躯な女とは思えないパワーで

ぎりぎりと上半身がロックされている。

こっちのパワーを吸収されているのではないかとすら思える


今この状態における痛みはないが、重要なのはそこではない。

文字通り目と鼻の先のコイツの言う、アレの射程距離に

入っていることが問題なのだ......!!


「は、離せ!!」


「ぜっーたいに離してなどやるものかッ!!」


アレとは何か、自分は怖いくらいコイツの考えが分かる。

回りくどくもアレをするためにこんな計画まで立てたのだから、

推測は容易い。


「は、花山さんやめるんだ!

 そんなことをしても彼はあなたの思い通りにはならない!」


「ええい、ままよ!!」


フラフラな一慶の制止など木の葉のように吹き飛ばし、

重心がぐらつく俺を奴は壁まで追いつめた。

それも当然、アレを喰らわないようにのけ反っているためだ


いくら花山がさほど重くないにしろ、

全力でアレを避けようとすれば未だ後ろに倒れ込んでいないのが奇跡だ。


「し、してやるぞ今こそ! ぶ、ブチュー!」


「接吻とか口づけとか、様々にやんわりとした表現がある中で

 一番直球で下品な言葉を選ぶお前なんぞにッ! 初めてを奪われてたまるか......!」


キツツキのような攻撃を寸で躱してはいるが、

もはや唇同士を回避しているだけで頬っぺたは幾度も犠牲になっている。

柔らかい感触は不快ではないが、痕が残りそうな程吸い付かれてることに

コイツがやろうとしていることが子供がするような可愛いキッス等ではないことを

証明している!


「この時のために私は準備をしてきた!

 それをこんな展開で壊されてたまるか!

 いっそのこと、チューさえすれば、チューさえすれば......!

 観念するがいい! ハルが私のものになるのは時間の問題だぞ!!」


「お、お前まさかキスすりゃ相手の目がハートになるとでも思ってるのか!?」


「結婚も確約されると聞いているぞ!

 既成事実がどうたらとか!」


「どこでそんなメルヘンで洗脳レベルの誤情報を聞いて来たんだ、バカちんが!」


予想ではシナリオの半分以上を他の奴が考えたのかと思ったが、

この女はキスさえすればどうとでもなると考えて

一割も筋書きを構想してなかったことがここで分かった。


やはり、未熟、甘ったれだ。

こんな奴の思い通りになるわけにはいかない。

なってしまったら、金どころか力技で全てを解決できる世紀末な

考え方をするようになってしまう


目の前の阿呆のためにも、簡単に屈するものかと必死に抵抗する。


だがそんな想い虚しく、ついに戦いで疲弊していた下半身が

力尽きてついに地面に倒されてしまった。

完全にマウントを取られたということはいつの世も変わらない、

下敷きになったものが敗者なのだ



「ふっふっふ......手こずらせてくれたな!」


「くっ、殺せ!」


幼児体型に乗っかられて身動き一つ取れないなんて屈辱だ。

こんな見かけ幼女に分からされるなんて......!


「さあ、目を閉じて......たっぷり味わうがイイ!」


邪悪で可憐な顔が間近に迫り、思わず言われた通り目を閉じてしまった。

なんてふざけた初めてだ


もう心も体も負けていた。

助かるはずはないと思った。

あなたの初めてはどんなでしたか?という質問に

これから毎度苦い顔することになることを覚悟してしまった。



しかし、まだ周りの喧噪がお嬢様の望みが叶う嬉々としたものではなく、

混乱による騒がしさに変わっていたことを

まだオレは気付いていなかった

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