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アイランド・サバイバル編・26

「くっそぉ~......!! もうどうにでもなれェ!!」


己の選択肢は逃げか蛮勇かの二つしかなかった。

そして自分が選んだのは後者だった。


勇敢な行動でないのはもちろんヤケクソ混じりだったからだ。

何故そんな行動を取ったのが後に聞かれても説明できるわけがない。

勝手に想像しやがれってんだ


もう相手にルールを守る気がなく、

選手とルールを守るはずの審判があんなのでは話にならない。

この惨劇に付き合わされるしかないのだ


せめても我を失った一慶のパンチが大振りなのが救いだった。

やるべきは武器があったさっきと同じ、はずなのだが

安全な素材で出来てない自分の拳で友人を殴りつけることには抵抗があった。

そうした優しさに溢れた理由を言い訳にこの場から逃げ出したいくらいだ


だがそれはセコンドの鬼コーチ達は許さないのである


「「なにやってんの!手出せ、手!!」」


もう変わりにどちらでも良いから代わりに戦って頂きたい。


そもそも目の前の彼はいくら好きな人の前だからといって、

追い詰められて正気を失う方がおかしいのだ。

それを声高にできたらどれだけ楽だろうか、

ただそれは許されないのである


そうしたことをボーっと考えていると、恐れていた一撃が

頬に飛んできた。


「ぶへっ」


情けない呻きと共によろめきつつもすかさず距離を取った。

そして直ぐさま口元確認、血が出てないかしら


「うわ」


戦場で出す者とは思えないドン引き声なんか出しつつ手の甲には今度こそ

本当の紅を数滴確認。

ちょっと切れてしまった。


こうなって逆上できたら楽なのだが、そんな喧嘩体質では土台ない。

なんならお家に帰りたい


強気な僕ちゃん何処へやら、中流階級の坊ちゃんは

もう負けでいいです

の一言が言いたくて堪りません。


ところが素敵なお友達は人が変わったように襲い掛かってきます。

それも身隠しようのフードが脱げそうです。


そうもなってくると幾らお人好しで名を馳せた自分も

段々腹が煮えくり返ってくるというもの。

こちとらてめぇの身を案じて手を上げないでやっていたが、

そっちがその気ならやられっぱなしじゃいられない


だって男の子なんだもん


「こんッちきしょおお――」


でも神様は不平等です。

あっちの見苦しい乱打はものの見事に当たるのに、

こっちのパンチは空を切るばかり。

どころか雄叫びも空しく遮られる攻撃をもろに顔面に受けるばかりです。


それもそのはず、腰が引けているのですから。

良いパンチどころか激しく動く対象を捉えられる訳がない。

加えて今浮かび上がった不平等な事実として、

若干あちらさんの背の方が高いことが大きく作用し始めていた


元々さほど背丈の大きくない平凡運動神経の吾輩が対等に

戦えていたのは、武器のおかげであることに気付く。

ともなるとこれはもう決まったようなものである。


つまり、終わりってことだ


「やめ、やめろぉぉ......!」


「ウッシャア!!」


小さな命乞いは野獣の叫びにかき消される。

いくらちょっとこっちが調子に乗ったからって、

君が負けそうになったからって、

そんな乱暴することないじゃないか!


孤独に戦う己への悲しみが募り、目線と戦意が下がってきた時

起死回生の一発が思い起こされた。

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