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アイランド・サバイバル編・20

驚いた表情はさほどオーバーなものではなかった。

しかし、理解しえない部分が見え隠れしている。

説明が必要なようだ


「お前もコイツに協力しているというのなら、このふざけた企画のおおよそは知っているな」



指さした先の花山は弁慶のように気を失って立ち往生したままだ。

そんな彼女を他所に目線だけはこちらに向けて

彼はぎこちなく首を縦に振った。


「このサプライズはだいたい花山の知力による活躍の場が設けられているが、

 当然それだけで俺を惚れさせようとはしていなかった。

 俺にも活躍の場、そして何より

 精神的にハイになる状態を作る必要があったわけだ。

 そうしたことによって二人の活躍によって乗り切った感覚、

 手に汗握る緊張感によって吊り橋効果を期待した作戦が肝だった。」


「......まさか」


「お察しの通りだ。

 その俺の活躍の場とは花山の知力を試された後の、

 俺の健やかな体力が試される闘技場イベントだ」


そう、突如として宣言した決闘には既に用意された舞台があるのだ。



謎の部族から差し出される試練には健やかな精神に宿るとされる、

健やかな肉体が試される、無茶苦茶な最終イベントがあった。

捕らえられた同級生の仲間たちの前でも行われる、仕上げの段階にあるものだ。


そこで華麗に筋肉隆々の役者が俺に倒され、

皆解放される流れのままに感動のフィナーレがゴリ押しで

訪れる、というキテレツな運びになっている。


その部分こそ悩みの種であり、遂には解決法に至らなかったために

そこに行き着くまでに阻止することを決断していた。


そんな厄介を反対に利用してやることにしたのだ。



「本来であれば、そこで――」


「ま、待って!

 それの相手役は僕じゃないだろう?

 どうやって戦うのさ......!?」


「まあ、逸る気持ちも分かるけど最後まで聞けよ。

 本当だったら相手は見た目からしてヤバイ大男がやる予定だ。

 そこを一慶、お前が今一度運営サイドに掛け合って代役で出るんだ」


「冗談だろッ!? そんなの無茶苦茶だ!

 そ、それにそんなやり方で決着をつけようなんて、まだ僕は......」


弱気になったような声色を意に介さず、今度はこっちが説得に掛かる。


「さっきまでのフードを被ってりゃ、風格も出るし

 皆には正体が分かることなんてないさ。

 加えてお前の手際の良さや身体能力からして、

 元のジャイアントキリングみたいな派手な試合は演出できないとは思うが、

 同じくらいの体格同士の熱い接戦が期待できると――」


「本当に、君はそれでいいの?」



遮る今度の言葉には否定の色を感じなかった。

どころか狼狽えた感じが消えかかり、乗り気であるかのような挑発的とも

取れる口調だと思った。


先ほどの弱い声の調子は己に対する心配のものではなく、

こちらを気遣う余裕から生まれたものだったのだと気付く。




「......ああ、いいさ。

 白黒つけるなら、それしかないだろ。

 行われるバトルのルールは知ってるな?」


「だから一応聞いたのさ」



もう勝った気でいるような物言いだ。

やはり、今回の刹那の恋心が彼を強くしたらしい。

ならば、こちらも張り合いがあるというものだ。


それに一番に俺がこの先に望んでいるのは男らしいフェアな戦い等という

副産物ではない。


負けるかもしれない、否勝つことの方が難しいであろうこの勝負に

自分は、最もらしい言い訳をもたらしてくれることを期待しているのだ。



憧れの彼女を諦める都合のイイきっかけを。



「なんだ、やる気満々じゃないか。

 これで話し合いは終わりだ......今度は、決戦の場で会おう」



言葉少なに別れを告げて、俺達は背を向けた。


お互い真の決闘への熱く震える想いを胸に秘め、

それぞれ偽りの茶番へと戻っていくのであった。

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