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アイランド・サバイバル編・19

「え......?」


驚いた顔はいつもの彼そのものだった。

どう取り繕っても、性根は優しくて気弱な少年らしさがそこにある。


「俺とお前......一慶、俺達は同じなんだよ。

 明るい何かを夢見て、それが思いがけずに目の前に現れて......

 それで惚れた。

 みっともないくらい、ほんの一瞬で」


いつものような軽い口調で語り掛ける。

温かな風が吹き抜ける。

それは下校途中に彼と朗らかに話し合う時に髪を撫でる、あの故郷の風とそう変わらない。

今ここでの違いは気恥ずかしさと潮風でべたついた様に感じるだけだ。


「そんなお前と俺は無用ないざこざだったり、

 情けない足の引っ張り合いをしたくはないんだ。

 これからもっと仲良くなれるかもしれないのに、

 色恋沙汰で偶然にも生まれたこの友情にヒビを入れたくはない」


「......じゃあ、どうするのさ!

 僕たちが限りなく似ているというのなら、

 どうあってもどちらかが折れるしかない......」


同志は俯き、心からの弱音を吐露した。

ここに来るまで彼も一人で抱え込んで悩みに悩んだことだろう。

こちらの気持ちも知っている一慶にとって、

せっかく得た憧れの人と友人のそれぞれを

天秤にかけなければならないことは苦しい難題であったはずだ。


友情を取れば、戦うこともなく彼女を諦めることになる。

恋情のままに挑むことになれば、俺と必ずぶつかることになる。


そして不器用な友人が選んだのは、紛れもなく後者であったのだ。



であるならば、

覚悟を決めた一慶に対し、この治雄にも逃れられない定めがある。


友の申し出を受け入れて退き、同時に花山を受け入れるか......

それとも抗って争うのか、という選択の定めが。



ただ、それを選択というにはあまりにも破綻している。


そんなことは俺が決めていいことではない。


「一慶......俺は決めたよ。

 お前とぶつかり合いたくはない。

 だからといって、快くお前の言われた通りに、花山の思い通りに、

 なるつもりも一切ない。

 そもそも、そんな妥協や消去法に近い形でアイツを選ぶことは

 卑怯でワガママでガキっぽいあんな女に対してだって、酷く失礼ってやつだ。

 そこでだ......後腐れもなく、平等で分かりやすい良い解決方法を思いついた」


一慶は首を上げた。

表情は苦悶に近いが、自分の意志を譲る様子はないらしい。


安心して、宣言できることを彼の固い決意に感謝した。



「お前に決闘を申し込む」


吹き込む風は熱を帯びた。


その熱さは南国の温かさでも

先ほどまでの赤裸々に語る火照りによるものでもない。

脈絡もなく発せられた戦いの宣言だけでも生じた確かな闘争心がぶつかり合う、

二人の間に生まれる火花の熱を帯びていた。

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