アイランド・サバイバル編・17
一慶の瞳に生気が宿っているのは、とある決意によるものだと
俺は読んでいる。
その決意とは何か、それについては語るも恐ろしい。
どこに向かっている想いなのかが分かってしまいそうだから怖いのだ。
「一慶、お前があっち側......コイツに加担する理由はなんだ?
さっき言った通り、密航していたことを見逃してもらったことへの
義理立てのつもりか?」
「......ああ、その通り――」
「いや、違うね」
含みのある沈黙から出した声を遮った。
アイツは嘘をついている。
だからすぐに訳も言えずに、こちらの渡し船にまんまと乗ってきた。
「元はと言えば、お前は巻き込まれた被害者だ。
お調子者の兄を止めようとして同伴し、成り行き美咲にも手を貸すように
言われたりしたんだろ? 違うか?」
彼のポーカーフェイスにヒビが入り始めていた。
うだるような暑さで流してる汗ではない。
そもそもここは風の通りがいい。
顔の影が濃くなったのも陽の光の向きが変わったからではなく、
顔が曇っているのだ。
「一慶に責任はそこまで無いわけだし、聞いた話が例え歪曲したものであったと
仮定しても......お前が自分から大きな悪さをしでかすような人間には思えない。
それこそ、過ぎたる罪悪感から肩入れしている可能性も考えられる。
......でも、そんな後ろ向きの加担にはどうしても思えない」
ますます一慶の表情は変わる。
なんなら元の目を隠すような前髪が戻ってきたようにさえ見える。
不安の表れである猫背になり、前傾姿勢になっている証拠だ。
「前から花山しか勝たん、なんて奴でもなかったろ?
そこまで褒めちぎるほど評価しているなら、お前は反対に俺の味方を
してくれるはずだ。 花山のことを思いやり......好きだからこそ!
円満になって欲しいと思ってるわけじゃないんだろ......?」
強調した好きという言葉に反応が見えた。
自分の中の予想は今や、確信に変わり始めた。
「つかぬ事を聞くが......最近、人を好きになったことはあるか?」
今度はもっと大きな体の反応が返ってきた。
背後で風船でも割られたかのような反射だ。
「それも、俺の知ってる内の誰かを――」
「そんなことないッ!!」
彼らしくない大きな声が森に反響する。
やはり、読み通りであったか。
先ほどまでの底知れぬオーラはどこぞに消え、
平静を取り繕うほどの余裕もないように肩で息をしている。
それは同時に恐れていたことでもあった。
しかし、ここで質問の手を辞めることはできない。
明らかにすることで、この胸のざわめきを払拭しなくてはならないからだ
「......前に、俺が憧れている人がいるという話をしたよな。
その人は今回のイベントの中にいる......分かるか」
ここで彼女の話を引き合いに出すのは、
それが一番の近道だからだ。
一慶が覚悟を決めたように一息つくと、
その目を光らせて告げた。
答えは出たのだ。
「遠回しな問答は、僕の様な冴えない男にはもう疲れたよ......
ハッキリ言おう、僕は君と同じ人を好きになっている。
そのために、治雄君には花山さんとくっついてもらわなきゃ困るのさ」
最悪な予感は的中し、
自分と似た本性を露わにした、ライバルの姿が大きく見えた。
ダブルパンチの時期が来る 逃げたし




