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アイランド・サバイバル編・15

続けざまに質問を全力投球でぶつけていく。


「それにお前はなんで解放されてたんだ?

 まだ縛り付けられていてもおかしくない」


「えっと、あ、そうよ!

 言い忘れていたわ!

 私、あの顔を隠したアキを攫って行った男に解放されたの!」


「......なぜだ?」


「鋭利なもので縄をスパッと!

 それでね、ええっと、これからはお前たち二人だけで

 お前たちの仲間を取り返しに来いって!」


コイツ台本の順番を忘れていやがったらしい。

自分は筋書きを知っていたから聞かされていなくても

違和感さえさっきまで持つことはなかったが、

もし自分が無知であったことを考えれば

目の前の女が迷いなく先導しているのに真っ先に疑問を持ったはずだ。


まさか神の視点で物事を理解していたが故に

盲点が出来ていたとは......


今一度自分は何も知らない状態である、と

思われていることを逆手に取らなくてはならない。

それが切り札であり、起点だ


ここから独り勝ちの流れに持って行く。

もちろん俺だけの道だ。


「なんかさっきからおかしくないか?

 そんなにスイスイと目的地に向かっているのは」


「えぇ? あ、あぁ! それは奴らに捕えらている間、

 懇切丁寧に道順をだなぁ――」


「よくよく考えれば、

 ここの原住民が自分達の土地を侵犯してきたことを怒ってるというなら、

 こんな回りくどいことなんてせず、

 見せしめにお前でも殺してこの島から出ることを迫って来ると思うんだが?」


この酷いシナリオを書きやがったのがどこのどいつか知らないが、

少なくとも花山ではないだろう。

コイツはそんなものさえ思い描くだけの脳は無い。

そのことは散々、テスト前の家庭教師として付き合わされてきた

経験から分かる。


国語の、それも特に物語を理解する能力に欠けているこいつに

脚本など書けるわけがない。


それの何よりもの証拠に、


「あっあっ、あっ......」


脳を掻きまわされているかのように、

奴の思考回路が既にオーバーヒートを起こしている。

追い詰められ、俺の鋭い指摘に弁解することもまともに出来ず

そして周りに味方はいない状況によって生まれた現象だ。


ただ、一つ。

この大掛かりな茶番が最後までサプライズだとはバレてはいけない。


そのことを遂行することだけに脳のリソースを割いていた花山は、

遂に思考放棄の域に至り始めている。

下手なことを言うくらいなら、茫然自失になった方がいいという判断だろう


というよりかは、何か取り繕うと言葉を選んでいる内に

拙い知能で文章を組もうとする思考に、シワのないツルツルの奴の脳みそでは

耐え切れなかったのだと推測する。



勝った。


とんだ茶番であったが、

コイツと一対一になるという逆境でまさかの逆転だ。


あとはその天に向けて開けられた口から敗北宣言を聞くだけだ


このことは全て私の権力によって引き起こしたものです、と。


その旨をスマホで録音さえすれば

俺の名推理によって、多大なる迷惑をかけられた皆を

いち早く救った人物として称えられて終わることが出来る。


何より、逃げ場のないプロポーズを受ける絶望の未来を回避することができた。


今から仲間たちの称賛の声が聞こえると思うと、

特に、有希さんからのお褒めの言葉を貰えると思うと

口角も口裂け女レベルで上がるというものである。


そんな不気味な笑顔でポケットからスマホを取り出し、

録音の準備をしようとした所で



「待って欲しい」


茂る緑を掻き分けて、とんだ邪魔が入った。


そして現れたのは勝利の鍵を落としそうになるほどの、

驚愕の人物だった。

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