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アイランド・サバイバル編・14

とは言ったものの、

分からない事だらけになってしまった自分に何が出来るか等

たかが知れている。


このまま知り得るストーリーで展開されていくのなら

出来るのは花山の邪魔くらいだ。

先に試練とされるクイズみたいなものの答えをすぐさま口にすること。


それだけで隣の奴が、

実は私追い詰められたらインテリなのよ、

みたいなプラスイメージを得ようする姑息な作戦を潰すことくらいは出来る。


だが、それだけ。


不審に思われるし、大してカッコ良くない。

客観的に見れば不気味は必至。


答えだけ知っていて解説などできない。

もし追求などをされようものならその姿は差し詰め、

カンニングをして解答できただけな所を

詳しい説明を求められて顔面蒼白になる悪ガキそのものだ。

みっともないったらありゃしない。


つまり、自分の強みである先を知っている事のアドバンテージは

二人きりになってしまう前までが有効期限であったのだ。

そいつを超えた今、まさに自分は無力だ。


しかしして、未だ自分が成し得ることのできる輝き。

それを先ほどから深まる謎の霧の中から探し出して行かなくてはならない。


しかし、


「さあ、私たちの仲間を救いに行こう!」


ぶりっ子女がすぐ横から妨害してくる。

思索に耽るのを悠長に待ってはくれない様子だ


このままでは長いこと茶番に付き合わされた挙句、

コイツの数多の使用人たちのフラッシュモブのようなサプライズを受けて

プロポーズを受けざる負えない状況を作り出されてしまう。

男が女にする少しずるい空気づくりを

令嬢様の容赦ないオーダーメイドでされては、

断わった瞬間どれだけの非難の目を浴びるかは想像に難くない。


絶対に回避しなくてはならない未来が、先にはある。


「ああ、いこう」


自分に言い聞かせるように決意に満ちた声を出した。

ついにこの状況に俺を呑み込むことができた、と

横の馬鹿は目を輝かせているが無論違う。


これから歩まんとする先は独り勝ちの一本道だ。

誰にも譲る訳にはいかない。


特に花山の思い通りになど、なってたまるか


そんな意識だけが俺を奮い立たせていた。



溌剌とした様子で先導していく花山。

演技をするつもりもないのだろうか、

道を知っていたらおかしいだろうに


いつもならそのままに口に出して突っ込みを

入れるところだが、

少しでも打開策を考えていたかった。

幸い、前を歩かせている間は話かけられることはない


そして予定通り4、5分ほど歩いた所で

第一関門のささやかな目印が木々の間に見えた。


後少しで茶番が始まるというところで、

制止の一手を切り出した。


「なあ、花山」


「ん、どうしたのハル?」


振り返り様の笑顔に不安など微塵もない。

頭がお花畑の女が描いているこれからは、

きっと俺を堕とすことのできる素晴らしいシナリオだと

信じて疑わぬものなのだろう。


だが、その外身だけは綺麗な間抜け面も

下らない筋書きも、共に打ち砕くいてくれよう


「淳先輩がどうしていなくなったか、教えてくれよ」


「え......ああ、それはアイツもアキと一緒で奴らに攫われてしまったのよ!」


「ふーん、あんな臆病そうでも体格の優れた強面の男が音もなく?」


「......」


途端に花山の相貌は凍った。

笑顔の仮面だけ張り付いて、大げさな冷や汗が可視化できるまでに


「そこが引っ掛かってたんだ......

 それこそ屈強な体つきでも、驚きが勝って抵抗が出来なかったとしよう。

 しかし、甲高い悲鳴もなく加えて何故同時にではなく、

 一瞬にして彼だけが消えていたのかを......」


「だ、だから攫われたって言ってるじゃない」


まだか弱いヒロインを気取っているつもりだろうが、

明らかに声色には動揺と焦りが見て取れる。


確かにコイツの言うことは正しくも一見思えるが、

どこか違和感がある。

現に淳が攫われた以外に姿が見えなくなった説明はつかない。

ならば目の前の女はそのことを自信たっぷりで演技を続ければいい。

ところが妙な反応を見せている様に思える。


俺の知らない更なる真実があるような気がしてきた。



それはこの窮地を脱することのできる、

切り札にもなり得る綻びであるとの予測を自分は付け始めた。

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