アイランド・サバイバル編・12
「「馬鹿女はどこだぁ!!」」
入り口が開いたと同時に吉沢さんと美咲の声が綺麗に共鳴する。
ただ、言ってることは道場破りのような破天荒さだ。
特に吉沢さんに関してはキャラが変わりすぎだ。
自由奔放な花山と小うるさい幼馴染によって
性格を歪められてしまったのだろうか。
もしくは最悪の場合、
戦いによってエキサイトしている今の状態が本性なのかもしれない。
そんな心配を他所に、場はさっきとは打って変わって静まり返っていた。
思えば、重い門を開かなければならないとなると
いざ男である自分と淳先輩がこき使われ、
必死に押して大量の汗をかいていた時には
向こうの騒音は鳴りを潜めていたような気がする。
流石は、これほどふざけたプロジェクトに全力を費やす者たちだ。
いざ、という時の切り替えは素晴らしい。
ただ隅の方に、バッチリとジャングルに似つかわしくない小道具が
落っこちてしまっている。
黙っておくとしよう
「ここよぉ~!」
いつも聞くようで少し弱ったフリをした擦れ声が聞こえた。
ご存知、お騒がせ令嬢様である。
今回ばかりは盗み聞きした通りの、
手首を傷めない程度の緩い拘束がなされた
哀れなヒロインがあまりにも目立ちやすい崖っぷちにいた。
しかも男の目を気にしているかのような随分綺麗な衣装を纏っている。
誘拐された女が、どう考えてもそうはならんだろうに
「気を付けてぇ~!
まだ周りに奴らがいるかもしれないわァ~!」
それに口調まで変わっている。
こってこてな囚われのお姫様気分なのだろう。
正直、忘れかけていた笑顔が嘲笑として表に出てきてしまいそうだ
「き、気をつけながら早くアイツを助けてやろうぜ......
一慶のことは兄として気になってしょうがねぇけど、まずはそれが先決だ......」
彼らしくもない冷静な意見に誰も異論はなかった。
警戒しつつもじりじりと全員で花山の元への向かっていると、
「あ、危ない!!」
花山のわざとらしい甲高い声が響いた。
それを合図のように一斉にたくさんの伏兵が姿を現した。
聞いていないパターンだ。
きっとこの緊急事態に作戦を変えてきたのだろう
ここで数に物を言わせて、一気に俺以外の皆を捕獲するつもりだ。
比喩でも何でもなく、花山の一声は一斉攻撃の合図だったのである。
しかし、この山崎治雄。
この程度のことでは動じない。
何故なら、
度胸があって肝が据わっている
というわけではない。
負け知らずの心強い味方がいるからだ!
既に屈強な彼女等によって心は揺さぶられ尽くされている!
「やっておしまい!」
「「命令するな!」」
「はいッ、ごめんなさ......」
少し調子に乗ることも許されず、
小さく謝ったことも聞き入れられる前に、
戦闘員たちは颯爽と駆けだしていた。
辺りは混乱を極めているが、
格さん、助さんばりに無双する彼女たちの
躍動するディフェンスによって指一本、
傍観者3人の誰も触られていない。
ちょっとした水戸黄門気分である
そうして浮かれていると、肩を叩かれ
淳先輩がこの乱戦状態に花山を助けるようジェスチャーしてくる。
先ほどから指揮官としての立ち位置さえ今度は弱気だった彼に取られているが、
反発することなく最善の策に従う。
このまま先輩にチビ令嬢を担いでもらうなりして、
自分達が逃走に成功すれば、
それに続いて美咲たちも上手く撤退するだろう。
そうすれば計画はおじゃんだ。
トボトボとメイドたちもなんだかんだで帰って来て、
笑ってこの島を離れられるだろう。
思い描いていた美しい好感度稼ぎプランは既に台無しだが、
いっそ花山の目論見も道連れにできれば
其れで良し、だ。
元々、サプライズのことをバラすだけで
そんなのは簡単に達成できたはずなのだが......
欲をかくと、大抵上手くいかないということ。
それを体感できたのがせめてもの自分の収穫だ。
元凶の女の救出までは後少し、
背後で繰り広げられる激闘もチラチラ観察しているが
依然、彼女たちが優勢。
紆余曲折はあったものの、
全ては終幕に向かおうとしていると思っていた。
この時は、予想もしなかった。
そんな目算がまるで甘かったことを




