アイランド・サバイバル編・7
そんな慌ただしい朝からやっと落ち着き取り戻した頃、
我々若者一同は神妙な面持ちで朝食を取っていた。
誰しもの箸の運びが遅い中、
自分だけはいつも通りの感じで食べ続けていた。
こんなトラブルどうってことない、といった感じで
いつものうるさい奴がいない分、場は静かであったが
そんな要因よりも仲間たちの面々には別の動機で明らかに緊張の色が見えていた。
さもありなん......とかいう言葉を使うべきであろうか
「ど、どうすんだよ......この状況......やべえよな?」
淳は動揺は過剰なくらいな体のバイブレーションによって表されていた。
箸が甲高い音をベルのように打ち鳴らしている。
リアクションがオーバー過ぎる。
ただ、その弟も周りの女子たちも言葉に出さないだけで
胸に抱える不安定な心境は共通しているだろう。
そうした空気の中、バタバタと音を鳴らして焦りながらも支度を済ました
ような感じに見せた、リトルメイドが自分達の食卓の前に顔を出した。
これから言うセリフを把握している側から言わせると、
もっと霧吹きとかで額に汗でもかいてるように見せるべきだと演出指導したい。
「私たちだけでお嬢の救出に行って来る。
お前達はここで待っていろ。
間違っても、下らない正義感で手助けに来ようなんて思うなよ」
出口近くにはビルとメイドたちがレスキュー隊といった出で立ちだ。
正直、ミドルを除いてビルとビックだけでも
どんな敵も倒せそうではある。
しかし、彼らはまもなく負けて消息を絶つ
ことになっている。
「ま、待ってください!
彼らを刺激する様なことをして失敗したらどうするんです!?」
あの一慶が立ち上がって柄にもなく大きな声で諭している。
確かに軽率な行動の様にも思えるし、囚われた仲間を想うなら
熱くなるのも当然だ。
だが、ここで感情的に加勢するのはかっこいい男子高校生のすることではない。
依然としてパクパク食べ続ける。
「奴らの言うことを信じて更に最悪な事態を招くかもしれない。
その前にこちらから仕掛ける。
ずっと私は大事な人が攫われてから居ても立っても居られなかった。
止めようとしたって、無駄だ」
「そんな......!」
そう言う割には攫われてから苛立っているような素振りは小さなメイドからは
感じられなかった。
役者としては......まだまだのようだ
見られていない所でも役になり切る......
そう、今完全に視線を向けられていない中でも
平然とした様で居続ける自分のように!
「帰り支度でもしておけ。
あいつらのお望み通り、お嬢を奪還したら直ぐ様この島を離れる。
そのつもりで」
さっと最後の用意セリフを言い残して、やり切った顔で
使用人たちは全員行ってしまった。
表情に出すとは詰めが甘い
「行ってしまった......」
ドカッと足から力が抜けたように椅子についたのは一慶だ。
自分も同じ事を言いたい。
やはり彼に加勢して少しでもダル絡みをすることでリトルメイドを
困らしてやりたかった。
必死に止めようとしたら、きっと凄く嫌がるだろうなぁ
「どうしたの、そんなにんまりして」
「あ、いやなんでもない」
美咲の指摘にさっと口元を手で隠した。
他人のことを言っていながら詰めが甘いのは彼女だけではなかった。




