表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
166/274

アイランド・サバイバル編・5

明け方近くまで張り込んで花山グループの極秘プロジェクトを盗み聞きし、

更にメイド組が帰って来るよりも早く自分の部屋に戻ってから

急ぎの後の睡眠だったこともあり、

顔に強い日差しが照り付けても熟睡していた俺は、


「起きろ、寝坊助!」


リトルメイドの怒号が目覚ましとなって飛び起きることになった。


扉の鍵を掛けなかったばかりに安息の地を

小さな怪獣に侵攻されることを許してしまった。


「わ、分かったよ......待ってくれ」


「いや、すぐに来い。 あと数分横になることも今は許さん」


倒しかけた上体がベッドに接する前に腕を引っ張られたので

首を負傷するところだった。

何やら朝食が冷めるからすぐにでも食べに来て欲しい、という

甲斐甲斐しい理由で起こしに来たわけではないようだ。


当然、白々しくも理由はお見通しであるのだが。

無知の演技を開始した。


「なんだよ......一緒に早朝のお散歩でもしたいのか?

 連れてくならワンちゃんと行けよ」


「早朝ではなくもう午前10時だ、この駄犬め。

 それにお嬢さまを誘拐したと思われる奴らの数人が押し掛けてきたぞ」


相変わらずの毒舌について回った台詞が昨夜聞いた通りの手筈のものとあっては、

寝ぼけた意識でも笑ってしまうところだった。

まだ、笑ってはいけない。


「な、なんだって!?」


大げさなくらいのリアクションにメイドの小さな体が少しビクついた。

俺もかなり大根役者のようだ。


「そ、そうだ。

 分かったら早く来い......

 交換条件がお前で済むなら突き出してやりたいんだからな」


「ああ、そうだな。

 立候補してみようかな」


驚いた顔で勢いよく彼女は振り向いた。

さすがにおふざけが過ぎた。

どうしても事情を知っていると余裕が出て、

意地悪メイドをおちょくりたくなってしまう。


「さあ、行こう。

 俺以外は皆集まってるんだろ?」


訝しむような目でこちらを睨み付けながらもうなづいた。

聞いた話なら、誘拐組とこちら旅行組の奇妙な対峙が既に外では

繰り広げられているはずだ。



外ではいかにもな民族衣装に身を包んだ浅黒い肌の男たちが数人並んでいた。

真相を知らなければ体格がいいだけあって、未知の存在であることも加えれば

威圧感は凄まじいものだったことだろう。


「や、やっときたかヤマオ」


淳先輩が神妙な面持ちでこちらを振り返る。

皆もすがるようにこちらを見てくる。

この状況を誰にでもいいから解決して欲しい気分なのだろう。


「彼らが全員出てくるまでここを動かんってそこでずっと待ってるんだ。

 向かい合ってる間、冷や汗が止まらなかったよ」


一慶の説明を受けるまでもなく状況は笑っちゃうくらい把握してはいるが、

待たせたとは知らず眠りこけていたことは確かなので頭を下げた。


「怖い思いさせて悪い、皆。

 でも俺が来たからにはもう大丈夫だ」


それを聞いて一同、息を呑む。

急なリーダーシップを目の当たりにして呆気に取られたというよりかは、

異民族を前に恐れや不安を顔に見せるのが普通であるところを

堂々と前へと進み出たことに、皆はギョッとした。


さあ、ここからが見せ場だ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ