アイランド・サバイバル編・4
花山の作戦をまとめると、こうだ。
まず、攫われた目的はヒロインになるためだったらしい。
これについて詳しく語るのも馬鹿らしいが、
要は原住民になりすました花山の部下によって俺達に、
「娘を返して欲しくば、拠点まで来い!」
と言い渡すことで筋書きは始まるらしい。
そんな誘拐までしておいて何故か正々堂々とした態度で
わざわざ拠点までの地図を寄越すと、
次に言われた通り目的地に俺達一行の俺以外を道中に次々と連れ去る。
そして目的地に手軽めの拘束によって縛られた花山を
露骨に見晴らしのよい場所に配置し、
最終的に残った俺に発見させて、助けさせようという魂胆らしい。
またこの後がアホらしく、花山は正義の味方ぶって
「私のために捕らえられた皆を救おう!」
だの、クサイ台詞で俺を誘導しながら二人で仲間を救う旅をしつつ、
ハルの方から惚れて貰おう作戦、なる恥ずかしい作戦名で進行する予定だそうだ。
仲間を救うには知恵比べなどが用意されているそうで、
その際、花山は事前に打ち合わせ通りの問題が出るために答えを知っている。
それを答えるだけ、つまり花山の実力で仲間を救っているように見えてくる。
そうした頭脳明晰な才女っぷりを見せつけて俺を惚れさせよう、というのだ。
様々な醜態を過去に見せつけて置きながら、
今更そんなことで評価を取り戻そうなど呆れて物も言えない。
ドキドキの冒険の最中なので吊り橋効果で何とかなるだろう、という
非常に楽観的なこのプランの終幕は二人の幸せなキスで終わる想定になっており、
何から何まで迷惑極まりないサプライズだ。
まだ目的にされている俺は別に構わない。
奴に振り回されるのはもう慣れた。
ただ、このことを知らず付き合わされる、
どころか誘拐までされる有希さんたちは可哀相だ。
密航してくるほど図太い美咲や男である糸田兄弟二人はまだ良いにしても、
有希さんや吉沢さんは被害者そのものだ。
特にか弱そうな有希さんには、少しでも怖い思いをさせたくない。
最後には全員に納得がいくようにネタバラシがなされるそうだが、
現実でも二人は結ばれるという形に持っていこうとする強引さは失笑ものだ。
この裏事情を知っていなくても、絶対アイツに惚れることは......
多分、なかっただろう。
きっと下手くそな演技の片鱗は見え隠れするはずだ。
どうにしろこれを知った以上、
奴の思い通りになどなってやるものか。
誰も一人として、俺以外にあんな世間知らずの女による
自己満足の犠牲者になってはならない。
皆にこのことをバラすことを、いの一番に考えた。
それだけで花山の作戦は破綻するだろう
しかし、
それではつまらない。
そのようにわざわざ用意されている茶番の舞台を
こちらも、利用しない手はない。
暗い森の中を俺は胸を高鳴らせて駆けながら、
自分の寝床へと誰にもバレないよう密かに戻るのであった。
サプライズ返しが夜明けと共に始まるのだ
ご視聴ありがとうございました。




