アイランド・サバイバル編・3
幼少期の頃の森を探検するワクワク感を想起させるような追跡が
終わりを迎えようとしている。
徐々に光が見えてきた。
人がいる証拠だ
しかし、それは火の明かりだとか原始的なものではなく
近代的にして人工的なようなハッキリした明るさだと感じ始めた。
生い茂る緑が隠していたのは原住民なんかの住まいではなく、
明らかな現代のテントだった。
丘に見えた作りはなんだったのか、
それとも無関係な存在なのか
追跡していた者たちは黒いレインコートのような物を来たまま、
テントに入っていった。
これ以上近付けば、不意に中から出てくる人間に見つかってしまう。
出来る限り近い太い幹をした木と草むらに身を隠して、耳を澄ませた
テント内には数多くの人影もあれば、楽し気な声も聞こえる。
こんな時間に何故だろうか
「申し訳ございません。
まだ起きている者の気配もあったため遅れました」
「うむ、ご苦労」
聞き間違いだろうか、
恐ろしく馴染みのある声がする。
しかし似た声など世界にはいくらでもいる。
言語が同じであれど、決めつけは早計だ
「ハルは寂しがり、心配になっていたであろう?」
「そ、そうであったかと......」
「花山じゃねぇか......!!」
小声で突っ込まざるを得ない。
中で話しているのはリトルメイドと誘拐されたはずの女だ。
何を考えているのか、
奴は攫われたフリをしていたようだ。
サプライズのつもりにしても達が悪い
これは御灸を据えてやらねば、と乱入してやろうかと
立ち上がったが気になる話題が持ち上がった。
「して、計画は順調なのだな?」
「はい、あとは少年少女らに捜索の手伝いを依頼すれば完了でございます」
まるで何のことを言っているかが分からない。
しかし、悪いことを企んでいるのは確かだ
「そう、これからが私とハルとの素晴らしい一時なのだ。
アキには悪いが、彼女にもしばらくは大人しくしていてもらおう。
他の小うるさい幼馴染だの、
無駄に発育のいい女だの、デコボコ兄弟二人にもだ......」
「では、作戦の総仕上げとして皆を集合させ確認をいたしましょう。
終わりましたら我々は戻ります。
怪しまれぬよう、朝日が昇るまでには」
「ビルは連れてこなかったのだな」
「熟睡していましたので......それに
彼は体格に似合わず、性根が善人に過ぎます。
隠し事や力加減などはビルに難しいでしょう」
力加減は善人ならば是非、コントロールして頂きたいところだが
とりあえず善人には出来ないことしようとしていることも分かった。
このまま引き下がる訳にはいかない
潜入捜査のような緊張感と興奮が、
深夜でも瞼を重くすることはなかった。
そしてその後、語られた
花山とその仲間達が画策していたプロジェクトは
何とも勝手で、奇想天外なものだった。
しかし、これを先に知れたことはドッキリを掛けられる側にとっては
好機でもあった




